2014 Fiscal Year Research-status Report
Best-Worst尺度法を利用した展開型項目反応モデルによる態度測定法の研究
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26780361
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池原 一哉 早稲田大学, 付置研究所, 助手 (60706018)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 項目反応理論 / 展開型 / 態度測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
テストデータや質問紙データの分析場面では,潜在特性の値が高くなるにつれて反応(正答)確率が高くなる累積型の項目反応モデルが用いられる。一方,態度測定や官能検査場面では,潜在特性値と位置母数の距離によって反応確率が定式化される展開型の項目反応モデルがしばしば利用される。本研究では,複数の選択肢の中から自分の考えや好みに最も合うもの(best)と最も合わないもの(worst)を両方とも選ぶBest-Worst尺度法を利用し,かつ,展開型のメカニズムを考慮した項目反応モデル(BWUモデル)の提案を行った。また,最も合うものを選択するBest尺度法を利用した展開型モデル(BUモデル)も定式化し,BUモデルとBWUモデルの推定精度の比較を行った。 はじめに,シミュレーション研究により母数推定の妥当性を検証した。分析の結果,両モデルにおいて適切に母数推定できることが確認され,また, BWUモデルの方が推定精度は高いことが示された。続いて,Usami(2011)の研究をもとに,遅刻に関する20個の意見を利用して,遅刻に対する態度の調査を実施し,提案モデルを適用した。分析結果より,BUモデルおよびBWUモデルのいずれにおいても,位置母数に関してUsamiの結果と高い相関があることが分かった。加えて,本研究で導出を行った情報関数を利用することで,潜在特性のレベルごとの標準誤差を評価できることが示された。なお,本研究ではマルコル連鎖モンテカルロ法によるベイズ推定により母数推定を行い,サンプリング手法にはハミルトニアンモンテカルロ法を利用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,提案モデルに関するシミュレーション研究を行い,大学生を対象とした調査を実施した。また,研究成果をIMPS2014で発表し,研究成果の一部を心理学研究に投稿した。投稿論文は採択され,平成27年2月号に掲載された。 以上より,平成26年度の研究はおおむね計画通り順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も,平成26年度の研究内容をより一層深め,当初の研究計画に沿って研究を推進していく。実験計画法を利用して項目の組合せを複数作成し,提示する項目によって潜在特性の推定精度がどのような影響を受けるかについてシミュレーション研究により明らかにする。また,項目反応理論におけるCATを参考に,設問の提示順や停止基準などを検討し,CAT実行システムの開発を行う。 展開型モデルは,態度測定データだけでなく選好データにも適用される手法である。個人の選好度を分析する手法には,展開型モデル(理想点モデル)の他に,理想ベクトルモデルがある。そこで,態度測定や選好度測定における展開型モデル(理想点モデル)と理想ベクトルモデルの相違点・類似点についても研究・考察を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では,提案モデルの母数推定方法に関して様々な手法を調査・検討する予定だったが,マルコフ連鎖モンテカルロ法を利用したベイズ推定では,推定時間に時間がかかったため,シミュレーション研究や実データの分析に予想以上の時間を要した。そのため,他の母数推定方法に関する研究を年度内に完了することが困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した研究費は,ベイズ推定や最適化法やプログラミング関連の書籍,また,統計・計量関連の国際・国内学術誌の購入に充てる。これらの図書や最新論文を参考に,提案モデルにおいてより効率的な母数推定が行えるか工夫を行う。
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