2014 Fiscal Year Research-status Report
若手美術家の熟達過程における動機づけの変化の縦断研究と熟達支援プログラムの開発
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26780364
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Research Institution | Tokyo Future University |
Principal Investigator |
横地 早和子 東京未来大学, こども心理学部, 講師 (60534097)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 創造性 / 芸術 / 動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、若手芸術家(芸術大学の大学院生等)の熟達化の過程について、特に創作活動の変化に及ぼす動機づけの影響(特に他者の影響)に焦点を当てて解明し、その知見を踏まえた芸術家支援のためのワークショッププログラムを開発することである。本年度は、予備調査として、質問紙調査と面接調査を実施した(現在も継続中)。 まず質問紙調査では、芸術系大学に通う学生・大学院生(若手芸術家)と経験豊富な芸術家を対象に、これまでの創造活動・表現活動に影響を及ぼした動機(他者評価、独自性追求等)についてデータを収集した。一方、面接調査では、経験豊富な美術家と近年注目されている若手美術家を対象に、これまでの創造活動やその変遷、創造活動において重要視していることがら(創作ビジョンや動機づけ等)を中心に、データ収集を行った。特に、創作活動において他者からどのような影響を受けているかと行った質問に対しては、経験豊富な芸術家はほとんど覚えていないこと、若手芸術家であっても、影響を与えた他者(大学の先生や予備校の講師など)は存在しても、そうした人々からの影響は直接作品に反映されているという意識はないこと、他者からのアドバイスも多くが重要視されていないこと、等の可能性が見えてきている。ただし、創作活動の初期の頃には、気になる他者(自分が好きな芸術家等)の作品を見たり、制作に悩んだときには誰かからのアドバイスがきっかけとなって新たな取り組みへの気づきを促されたりといったエピソードは少なからずあることから、今後は、こうした側面が取り扱えるような工夫が必要であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙調査、および面接調査を行い、そのデータに対する予備的分析から、今後の研究を進める上で取り扱うべき重要な観点を得ることができた。特に、面接調査のデータの予備的分析から、創作活動における他者からの影響については、経験豊富な芸術家はほとんど覚えていないこと、若手芸術家であっても影響を与えた他者(大学の先生や予備校の講師など)は存在しても、そうした人々からの影響は作品に反映されたと考えていないこと、他者からのアドバイスを思ったほど重要視していないこと等の傾向があることが見えてきた。経験豊富な芸術家の場合、遠い過去にあった他者からの影響についてのエピソードは語られにくいと考えられるが、若手芸術家であっても他者からの影響についての話をうることは難しく、なぜそのような傾向が見られるのかといった側面も踏まえて、創造活動における他者からの影響を探る手がかりが得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
若手の芸術家らを対象とした継続的な調査(観察と面接)を行う予定である。特に芸術系大学に通う学部生と大学院性、卒業・終了後間もない若手芸術家の3群を設定し、創作活動に対する動機づけや創作環境の違い、他者との関わりの違いなどについて比較研究を行う予定である。特に、創作活動を行う際に、芸術家達は実際にどのようにして新しい作品制作に取り入れられる情報を収集するのか、そのとき他者を含む外界からの情報をどのように集め、どのように利活用するのか、またこうした外界からの情報がこれまでの自身の作品制作とどのように関連づけられるのか、といった側面に焦点を当てた現場観察、並びに面接調査を実施する予定である。
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