2015 Fiscal Year Research-status Report
子どもの視点に立った養育とアタッチメントの発達:母親の視線解析に基づく縦断検討
Project/Area Number |
26780367
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
篠原 郁子 国立教育政策研究所, 生徒指導・進路指導研究センター, 主任研究官 (30512446)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達心理学 / 親子関係 / アタッチメント / 視線計測 / 乳児 / mind-mindedness |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,乳児期の親子に注目し,発達早期に子どもが養育者に対して発達させるアタッチメントの質と,養育環境の特徴との間の関連を明らかにすることである。旧来,アタッチメントの安定性には,養育者の敏感で適切な養育の実践が肝要と考えられてきた。本研究では,敏感な養育の実践を支えるものとして,養育者自身による乳児の内的状態の感じ方,覚知の仕方の特徴に着目し,乳児からどのような情報を得ようとするのかという知覚特徴について検討する。具体的には,①乳児の行動場面を母親に提示し,母親の視線を計測することで視覚的情報探索の積極性,注視対象や注視時間に見られる特徴を計捉える。続いて,②母親が持つ,乳児の心的状態への目の向けやすさ(mind-mindedness) を実験的に測定する(篠原,2006)。①で測定した,乳児に対して母親が示す視覚的情報探索の特徴が,②における,乳児の具体的な心的状態の想像や読み取りとどのような関連を持つのかを検討する。加えて,③母子相互作用場面を観察し,母親が実際に行動として示す養育の特徴を把握する。最後に,子どものアタッチメントの安定性を測定し(AQS),①や②の特徴が,③における養育実践を通して,アタッチメントの発達に及ぼす影響の有無,また,そのプロセスを検討する。こうした検討により,安定したアタッチメントの発達を支えるための親子支援や事前介入,教育の設計に有益となる知見が得られると考えられる。 本年度は,生後6ヵ月時の母子を対象に,①②について母親の特徴の計測実験,ならびに③の母子相互作用の観察を実施した。また,昨年度に6ヵ月時点の実験を終えた母子については追跡調査を実施し,生後18ヵ月時点において,再度,③の母子観察を行った。また,子どものアタッチメント安定性測定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の変更に伴い,初年度には乳児期の親子を対象とした実験室の整備,新たな協力者募集等,実験実施体制の整備に一定の時間を要した。このために生後6ヵ月時点での第1回目の実験の開始時期がやや遅れたことから,初年度と本年度の2年度に亘って,第1回目の実験を行うこととにした。本年度は生後6ヵ月児の実験協力者の確保を重視して研究を進めた。生後6ヵ月時点での1回目の実験開始の遅れに伴い,生後18ヵ月時点での2回目の追跡実験についても,順次実施するという形で行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
生後18ヵ月時点での2回目の追跡実験について,今後も引き続き実施し,縦断データの蓄積に努めることとする。また,視線情報の計測と解析については,共同研究の実績のある大学研究機関との連携を引き続き充実させ,研究を推進する。
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Causes of Carryover |
今年度は1時点目の実験実施を確実に進めることに重点的に取り組んだため,2時点目の追跡調査に関わる支出が予定よりも少なくなった。また,今年度は実験実施を進めたため,実験データの分析に関わる作業については実験後に順次行うこととし,これに関する使用額が予定よりも少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2時点目の追跡調査を順次行うにあたり,計画していた必要な経費を使用する。また,得られたデータの分析作業を進めるにあたり,来年度以降には専門的知識を持つ研究者との打ち合わせ等を行い,成果に関して国内外での学会等で発表を行うべく,計画的に旅費を使用する。
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