2014 Fiscal Year Research-status Report
認知的特性に着目した転換的語り直しによる心理的回復・成長モデルの構築
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26780392
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
池田 和浩 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 講師 (40560587)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 転換的語り直し / 自伝的記憶 / 心的外傷後成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ポジティブな転換的語り直しの効果を引き出す認知特性を抽出し、体験の肯定的再評価から心理的回復・成長に至る内的なモデルを調査および実験室実験により構築することを目的とする。平成26年度は、心的外傷後成長と否定的な思い出の転換的語り直しの関係性を、記憶のメカニズムを用いて考察することを試みた。 参加者は、ネガティブな記憶特性の評価するために、過去のネガティブな体験を一つ想起し、記憶特性(主観的特性質問紙および記憶の重要性)を評価するよう求められた。また、心的外傷後成長の評価も同時に測定された。 本研究から得られた結果を纏めると、次の3点に集約される:(1)記憶がネガティブな感情に彩られ、鮮明であり、再体験が多く見られる場合、侵入思考が増大すること、(2)記憶が精緻に体制化されているほど、その重要性を高く認識し、心的外傷後成長全体に寄与しうること、(3)語りの反復が多いほど、記憶の鮮明さ、再体験の程度、ネガティブ感情価は減少し、その体験から、他者との肯定的関係性および人間としての強さを高めること、である。 結果から、心的外傷後成長には、ネガティブな体験に新たな意味を付加するような語り直し方略が有用であると推察される。これまで、多くの研究で、転換的語り直しはその目的に沿った記憶の変化を生じさせることが示されてきた。本研究は、肯定的かつ自己成長を目的とした転換的語り直しには、心的外傷後成長を促す効果が内包されることを予測させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
語り直しによる心理的回復・成長の基本的なモデルを示すための、基礎的なデータを収集することができた。また、分析の結果、モデル確立のための重要な結果を一部示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、心的外傷後成長を促す具体的な転換的語り直し方略の基礎的なかたちをもさすることを目的とする。そのためには、そもそも我々が日常生活の中で、情動的な転換的語り直しをどのような目的で用いているのかを検証する必要がある。そこから、目的に沿った転換的語り直しの使用法を確立することが可能であり、心的外傷後成長をさらに促進することにつながると予測される。
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Causes of Carryover |
26年度に申請した経費は全て使用済みである。事務方との連絡が行き届いておらず、57,608円の財務処理が遅れている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度の予算として、上記経費の処理を行う。
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