2015 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害におけるメンタルコントロール:対処方略とその介入法の検討
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26780393
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
佐藤 拓 いわき明星大学, 教養学部, 助教 (10577828)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 侵入思考 / コントロール方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、前年度の調査で明らかになった自閉症スペクトラムに特有なメンタルコントロール方略の再検討を行った。 自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J:若林他,2004)、侵入思考に対するコントロール感、および侵入思考に対するメンタルコントロール方略を測定した調査データを再検討した。その結果、AQ-Jのカットオフ・ポイントである33点を超えた調査対象者は、覚醒水準を低下させるメンタルコントロール方略以外に、侵入思考の再侵入を避けるために罵り言葉を用いる傾向が強いことが新たに明らかになった。 上記の2つの方略は自閉症スペクトラムに特有な方略だと考えられるが、その方略が侵入思考の再侵入を増加もしくは減少させるかを検討する必要があった。各方略の使用と侵入思考に対するコントロール感の関連を検討するため、3回の縦断調査を実施した。覚醒水準の低下と罵り言葉の使用に関する知見が再現されるかを検討したところ、前回の調査同様、AQ-Jのカットオフ・ポイントである33点を超えた調査対象者は、覚醒水準の低下の方略を用いやすいことが明らかになった。また、罵り言葉の方略は、第2回の調査において33点を超えた調査対象者で用いられる傾向が高かった。次に、同時効果モデルを用いて因果関係の推定を行ったところ、侵入思考に対するコントロール感が低下すると罵り言葉が用いられやすくなることが示唆された。覚醒水準の低下については、適切なモデルが示されなかった。 罵り言葉の効果については、実験による検討が可能なため、罵り言葉を用いた思考抑制実験を実施している。現在のところ、侵入思考の抑制に罵り言葉を用いた実験群は、統制群に比べて3回目の抑制後のネガティブ気分や侵入数が多かったものの、思考のリバウンド等はみられていない。以上の調査、実験については次年度も引き続き検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
自閉症スペクトラムに特有のメンタルコントロール方略として、当初は想定していなかった罵り言葉を用いる方略が確認された。この方略の再現性と侵入思考の再侵入に対する効果を検討するために、追加の研究が必要になった。以上の理由により全体の計画に変更・遅延が生じた。ただし、遅れはあるものの、覚醒水準の低下については、現時点では2回の調査で結果が再現された。以上のことから、研究の確実性は高まったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、自閉症スペクトラムに特有なメンタルコントロール方略の効果について再確認を行い、侵入思考に対して効果的な方略と不適切な方略のリストを作成する。そのリストにもとづき、自閉症スペクトラムの特性に合わせた心理教育の内容を考案する。また、注意機能を考慮した侵入思考への介入方法をアナログ研究によって検討する。なお、研究の実施に関しては、研究倫理審査の承認を受け、研究協力者の同意を得た上で実施する。
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Causes of Carryover |
当初は想定していなかったコントロール方略の再現性と侵入思考の再侵入に対する効果を検討するため追加の研究が必要になった。それにともない、全体の計画に変更・遅延が生じ、人件費・謝金等に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究協力者への人件費・謝金、および旅費に用いる。
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Research Products
(1 results)