2014 Fiscal Year Research-status Report
大学生の怒りの変容に適したロールレタリングの開発‐想定する他者の違いに着目して‐
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26780397
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
金築 智美 東京電機大学, 工学部, 准教授 (40468971)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 怒り感情 / ロール・レタリング / 怒り対象焦点型 / 受容焦点型 / 認知行動理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,怒りを認知・感情・行動的側面から捉える認知行動論的観点に立ち,対人関係の要素に焦点を当てた書記的方法の一つであるロール・レタリング(以下RL)の即時的効果を明らかにするため,性格特性としての怒りが高い大学生を対象に,RLに関する心理教育及びRL(往信,返信)1回を実施し,それらが怒りの状態的側面に及ぼす効果を調べることを目的とした。また,2種の対人関係(①怒りの対象となっている他者(怒り対象焦点型),②本人にとって受容的な他者(受容他者焦点型))に焦点化した異なるタイプのRLが,怒りの状態的側面に及ぼす効果の違いを,比較・検討した。なお,本研究は,事前に,東京電機大学のヒト生命倫理審査委員会にて承認を得て実施した。
実験は,教場で実施した。実験参加者は,怒り対象焦点型RLが21名,受容他者焦点型RLが26名,統制群が32名であった。RL群には,まず怒り感情及びRLに関する心理教育を行い,続けて,往信,返信を各10分で実施した。RL実施前後で,怒りの状態尺度,怒りの自己陳述尺度,肯定的感情の受動的感情10項目及びアクティブな感情10項目等への回答を求め,収集されたデータに関して分散分析を行った。その結果,統制群と比して,RL群の「他者からの不当な扱い」や「敵意に満ちた考え」といった怒りの自己陳述が,有意に低減することが分かった。また,肯定的感情のうち,アクティブな感情は,受容他者焦点型RLが怒り対象焦点型RLよりも,顕著に増加していた。
以上から,短期のRLは状態的な怒りの変容に有効であると同時に,想定する他者の違いによって,効果の現れ方が異なることが示唆された。ただし,怒りの特性までの有効性は明らかではないため,平成27年度には,長期のRLを実施し,怒りの特性の変容に及ぼす効果を調べる必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに,怒り感情の低減を目的とした短期的なRLの効果を調べる実験を,実施することが出来た。また,その効果も実証されたため,平成26年度に作成した実験プロトコルやワークシートを基に,長期的なRLの介入実験を行う予定で準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,平成26年度で実証された成果を,日本心理学会で発表することを予定している。また,本年度中に,怒りの変容に及ぼす短期的なRLの効果に関する論文をまとめ,学術雑誌に投稿することを予定している。さらに,長期的なRLの介入実験に参加してくれる実験者を募り,適宜,実験を進め,データを収集する予定である。
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Causes of Carryover |
データ収集の都合で,学会発表が平成27年度にずれ込んだことにより,旅費の申請を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度使用予定であった旅費の申請を,今年度の学会出張に充てる予定である。
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