2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢がん患者と家族を対象とした終末期の治療選択に関する心理支援プログラムの開発
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26780406
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
塩崎 麻里子 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (40557948)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん患者 / 遺族 / 意思決定 / 後悔 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,既存データの再解析と新たに収集したデータから,高齢者遺族の意思決定における特徴を明らかにした。 再解析に関しては,高齢がん患者の遺族37名を対象とした面接調査のデータから,がん患者の家族が,終末期の治療選択の何に,どのような理由で後悔をしているかを明らかにし,後悔を機能的に制御する心理的対処を後悔の性質との関連から検討した。結果として,後悔の内容は,時間経過により,「決定」に対する後悔から,意思決定の「過程」や「選択肢」に対する後悔へ多様化することを示した。また後悔がない/ある理由として,上位に挙げられた理由は質的に異なっていること,後悔の時間的変化から,決定に対する(行為)後悔は,心理的対処に強く動機づけられ,制御しやすいのに対して,決定し損なったこと,考慮し損なったことに対する(非行為)後悔は,制御しにくく,時間と共に増悪することが示唆された。高齢であることによる未来展望や情動調整の視点から,考察した。 一方新たに収集したデータでは,がんに加えて,認知症のある患者の家族11名を対象に面接調査を実施し,後悔を引き起こす要因と後悔に影響する選択の仕方を探索的に検討した。その結果,後悔を引き起こす要因は,3テーマ(知識の欠如・家族の心理的要因・他家族への影響)の10カテゴリーに分類された。また,後悔に影響する選択の仕方は,9カテゴリーに分類された。結果から,後悔を引き起こしやすい特徴として,長期介護の中で,複数回意思決定のタイミングがあり,考慮すべき要因の変化に伴い最適な結論が変わることが挙げられた。後悔しない選択において重要な点は,一人で抱え込まない,決めることから逃げない,患者と家族をトレードオフで捉えない,多様な視点から論理的に考える,その時の最善の決め方をしたことを確認することの5点にまとめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とは若干内容が異なるものの、既存データの再分析と面接調査の実施と質問紙調査の計画を行ったため、おおむね順調に進展しているといえる
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Strategy for Future Research Activity |
次年度において,現在計画しているウェブを利用した質問紙調査を実施する。また,当初予定していた死別した療養場所の違い(緩和ケア病棟と一般病棟,在宅)による遺族の後悔の生起モデルの違いを検討することを目的とした質問紙調査の実施計画を進める。
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Causes of Carryover |
本年度は、おおむね、順調に研究を進めることができたものの、論文化が遅れている。英雑誌に投稿を予定しているため、残額は、英文校正等に使用できたものと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、論文化を確実に行うために、早くから、投稿準備に入る必要がある。また同時に、予定していた調査は年度内に実施し終えてしまう必要があるため、計画や実施を早める方向で検討している。
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