2014 Fiscal Year Research-status Report
海馬局所ネットワーク回路におけるオシレーションメカニズムの検討
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26780411
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 江津子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60424313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海馬 / オシレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、グルタミン酸受容体の1種であるカイニン酸受容体の作用薬であるカイニン酸を投与することにより誘導されるガンマオシレーションについて、オシレーションの誘導に関与する受容体について検討を行った。カイニン酸受容体は、GluK1-GluK5のサブユニットから構成される。海馬CA3野のガンマオシレーションの発生には、興奮性と抑制性の神経細胞からなる反回性の神経回路が寄与すると考えられているが、興奮性神経細胞にはGluK2を含むカイニン酸受容体が、抑制性神経細胞にはGluK1を含むカイニン酸受容体が主に発現する。低濃度のカイニン酸を投与することにより誘導されるガンマオシレーションに、どちらのタイプのカイニン酸受容体が関与するのか検討した。 海馬スライス標本を用い、CA3野興奮性細胞に発現するカイニン酸受容体に対するカイニン酸受容体の阻害薬であるACETの効果をパッチクランプ法を用いて検討した。カイニン酸受容体を介するシナプス電流は1 μMのACETにより阻害された。一方で、GluK1サブユニットを選択的に阻害する濃度として報告されている50 nMのACETは興奮性細胞から記録されるカイニン酸受容体を介するシナプス電流を阻害しなかった。このことから、低濃度のACETは、GluK2サブユニットを含むカイニン酸受容体には作用しないことが示唆された。 次にCA3野より局所フィールド電位を記録した。低濃度のカイニン酸を灌流投与することにより頑健なガンマオシレーションが誘導されたが、50 nMのACETを共投与することによりガンマオシレーションのパワー値が有意に減少した。低濃度のカイニン酸投与により誘導されるガンマオシレーションは、抑制性神経細胞に発現するカイニン酸受容体の活性化により生じている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カイニン酸投与により誘導される海馬CA3のオシレーション活動に、主に抑制性介在ニューロン上に発現するカイニン酸受容体サブユニット(GluK1)が関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コリン作動性入力により生じるオシレーション活動のメカニズムとの比較及び相互作用について検討を行う。
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Causes of Carryover |
ガンマオシレーションを誘導する際に投与するカイニン酸の濃度に関し条件の確立に予定よりも時間を要し、コリン作動性入力によるオシレーションメカニズムに関する実験の実施を見送ったため繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度はコリン作動性入力によるオシレーションメカニズムを含めて実験を行う予定であり、また実験用機材・試薬・消耗品等の購入や学会参加を予定しており、繰越金を含め予定通り使用する。
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