2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26780412
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新美 亮輔 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (60513687)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 物体認知 / 情景認知 / 眼球運動 / 注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、手の知覚と視覚的注意の関係についてまとまった研究結果を得ることができた。特に、平成26年度中に使用を開始した眼球運動測定装置による実験で興味深い結果が得られた。手の画像を単独で観察しているときや、手を含む自然な情景画像を観察しているときの眼球運動を調べたところ、単独の手画像と自然な情景画像に含まれる手とでは観察のしかたがかなり異なることがわかり、手の知覚には情景文脈の影響が大きいことが示唆された。また、自然な情景画像中の手は、同時に顔が含まれれば顔の次に観察される傾向があること、何かの物体と相互作用している手はそうでない手よりも早く注視されやすいことなど、いくつかの顕著な特性が見られた。手の知覚では、顔や、手に持つ道具など他物体との相互関係が予想以上に決定的であることがわかった。この成果は国内外の学会で発表し、多くの研究者の注目を集めている。 このほか、眼球運動測定を用いない行動実験として、手の画像が他の物体(イスなどの日常物体、顔や足などの身体部位)の画像に比べてどれくらい注意を引くかを検討した実験、手の画像に対して注意を向けた後に起こる復帰の抑制(inhibition of return, IOR)を検討した実験を遂行し、まとまった量のデータが得られた。残念ながら現時点では、手に対して向けられる注意が他の物体に対する注意と際立って異なることを示す証拠はどちらの実験からも見いだせていないが、顔や足も含めた身体部位とそれ以外の日常物体との違いの影響はないかなど、より詳細な分析を進めているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験は順調に進んでおり、複数の実験テーマについてまとまったデータを集めることができた。その一部は学会で発表しているが、なお分析・検討の必要なものもあり、引き続き実験を継続することに加えて論文発表に向けた準備が必要になっている。眼球運動測定装置は継続的に使用できており、測定データの集計・分析もプログラムによって半自動化され、効率的に実験を遂行できる状況にある。 一方で、研究代表者の機関移動があったため、やむをえず実験を一時的に中断するなどの影響があり、研究の進捗に停滞が生じた。移動後の機関において実験環境の構築を行っており、すみやかに研究活動を再開する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き実験を継続するとともに、すでに得られているデータの分析と成果発表にも注力する。特に、いくつかの結果は論文としてまとめられる段階にあるので、論文化を進める。 また、研究計画にあるテーマのうち未着手のものに、手の皮膚電気活動(EDA)を利用するものがある。このテーマについては早急に実験設備を整えるとともに、できるだけ早い時期に実験を開始する。
|
Causes of Carryover |
平成26年度に既存の眼球運動測定装置セットを購入せずオープンソースソフトウェアと市販のカメラ・PC等で眼球運動測定環境を作成したために生じた余剰分である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
現状では同時に1つの実験しか実施できていないが、同時に複数の実験を並行して実施できるようにすることで、より効率的な研究遂行と速やかな研究目的達成を実現したい。具体的には、(1) PC・ディスプレイ等を購入して行動実験を行なえる実験ブースを追加、(2) 実験実施を補助する者に対する謝金、(3) これにともなう実験参加者の増加による謝金の増加、等での使用を計画している。
|
Research Products
(2 results)