2014 Fiscal Year Research-status Report
視覚皮質のアセチルコリンは覚醒動物の視覚認知に影響するのか?
Project/Area Number |
26780415
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
相馬 祥吾 玉川大学, 脳科学研究所, 科研費研究員 (00723256)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 一次視覚野 / アセチルコリン / コリン作動性ニューロン / 192IgG-saporin / コントラスト感度 / ゲイン調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の認知症研究などから、ヒトの視覚認知機能が正常に働くためには、視覚皮質内のアセチルコリン(ACh)が必要不可欠であることが分かってきた。しかし、AChがどのように視覚情報処理に関与するのかは依然として未解明のままである。 これまでに、麻酔下の動物(サルやラット)において、AChが視覚皮質ニューロンに与える影響を検討したところ、多くのニューロンにおいて視覚応答を増大すること(反応ゲイン調節)、また、その修飾作用は、ACh受容体サブタイプの中のムスカリン性受容体が重要な役割を果たしていることを見出してきた(Soma et al., J Neurophysiol, 2012;Soma et al., Sci Rep, 2013)。 しかし、覚醒動物においてAChによる反応ゲイン調節がどのような視知覚を引き起こすのかは明らかとなっていない。そこで、本研究では、視覚皮質にAChを放出する前脳基底部のコリン作動性ニューロンを薬理学的に操作することで、覚醒動物の視覚機能、特にコントラスト感度が変化するかを検討した。これに先立ち、H26年度は、自由行動下のラットに、視覚機能検出課題を短期間で学習させる実験システムを確立し(Soma et al., Physiol Rep, 2014)、その有用性を実証した(Soma et al., Front Aging Neurosci, 2014)。これにより、前脳基底部のコリン作動性ニューロン選択的に破壊したモデルラットにおいても短期間での実験が可能となると考えられ、視覚皮質におけるAChの機能的役割の解明に近づくことが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
覚醒動物の視覚機能を測定する上で問題となることの一つに視覚刺激検出課題を学習させるのに長期間かかることにある。この問題を解決するため、H26年度は短期間にラットが視覚刺激検出課題を学習するための実験プロトコルと装置を開発した(Soma et al., Physiol Rep, 2014)。これを利用することで、コリン作動性ニューロン選択的に破壊したモデルラットにおいて効率的に視覚機能を測定することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、覚醒げっ歯類における視覚刺激検出課題の実験系を構築済みであり、かつ、視覚皮質に投射する前脳基底部のコリン作動性ニューロンを選択的破壊したモデルラットにおいて、視覚機能を測定済みである。今後は、視覚機能の低下の程度とコリン作動性ニューロンの破壊の程度の相関を検討し、さらに、視覚皮質のアセチルコリンレベルが低下した頭部固定行動ラットに視覚刺激検出課題を遂行させ神経活動を記録することで、視覚皮質のアセチルコリンは覚醒動物の視覚認知に影響するかを明らかにする予定である。
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Research Products
(4 results)