2014 Fiscal Year Research-status Report
予測の脳内メカニズム解明:刺激文脈ベースの予測と行為ベースの予測の協調機序の検討
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26780424
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木村 元洋 独立行政法人産業技術総合研究所, 自動車ヒューマンファクター研究センター, 主任研究員 (70612183)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 予測 / 刺激文脈 / 行為 / 事象関連脳電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、視覚事象の予測を実行している二つの予測機構(刺激文脈ベースの予測・行為ベースの予測)の協調メカニズムを、脳波の一種である事象関連脳電位(ERP)を用いて解明することを目的とする。刺激文脈ベースの予測機構は、視覚オブジェクトの現時点までの文脈からルールを抽出し、それを基に瞬時に予測モデルを形成することで、そのオブジェクトが次にどう変化するのかを事前に、観察者の意図に関わらず自動的に予測する。一方、行為ベースの予測は、我々が自己の行為によって環境に働きかける際、その行為によって環境にどのような変化が生じるかを事前に予測することを可能にしている機構である。この二つの予測機構の協調メカニズムを調べるため、まず刺激文脈ベースの予測機構と行為ベースの予測機構のそれぞれの働きを特異的に反映するERP効果の特定を行った。その結果、刺激文脈ベースの予測を反映するERP効果として、(1)予測された事象と実際の事象が不一致の際には、事象オンセット後200-300 ms付近で後側頭部優位の陰性電位(visual mismatch negativity)が出現すること、(2)予測された事象と実際の事象が一致した際には、事象オンセット後180-220 ms付近で中心部優位の視覚誘発電位(P2)の減衰が生じることがわかった。一方、行為ベースの予測を反映するERP効果として、(1)予測された事象と実際の事象が不一致の際には、事象オンセット後150-300 ms付近で後側頭部優位の二峰性の陰性電位が出現すること、(2)予測された事象と実際の事象が一致した際には、事象オンセット後120-180 ms付近で後部優位の視覚誘発電位(P1)の減衰が生じることがわかった。さらに、行為ベースの予測により、刺激文脈ベースの予測を反映するvisual mismatch negativityの惹起パターンが変化するという、二つの予測機構の協調メカニズムの階層的関係性を示す興味深い現象も新たに発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の目標は、国際学術雑誌に2 本以上の論文発表であった。下記の通り、国際学術雑誌に2本の論文が受理されるとともに、現在1本の論文を投稿中である。おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、平成27年度は、昨年度までに明らかにしたERP効果を指標として、実験参加者自らの行為によって刺激系列を生成する実験パラダイムを軸に、刺激文脈ベースの予測機構と行為ベースの予測機構の関係性の検討を行う。特に昨年度に発見した、行為ベースの予測により刺激文脈ベースの予測を反映するvisual mismatch negativityの惹起パターンが変化するという現象に関するERP研究を推進することで、二つの予測機構の協調メカニズムの階層的関係性の詳細を明らかにする。国際学術雑誌に2 本以上の論文発表を目指すとともに、国内外の学会での成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
人件費・謝金などで若干の誤差が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、人件費・謝金として使用する。
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