2014 Fiscal Year Research-status Report
カナダ・オンタリオ州におけるリテラシーを中心とした「学力」(コンピテンシー)研究
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26780425
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
森本 洋介 弘前大学, 教育学部, 講師 (20633613)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | カナダ・オンタリオ州 / リテラシー / コンピテンシー / 学力 / 21世紀型スキル / 世界市民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カナダ・オンタリオ州において、カリキュラムを策定するオンタリオ州教育省と、学校教育を改善し、教育に関する社会への説明責任を担う独立機関である「教育の質とアカウンタビリティに関するオフィス(Education Quality and Accountability Office、以下EQAO)」が想定するコンピテンシー、とりわけリテラシーに関する考え方について、世界的なコンピテンシーの潮流との関連性に明らかにすることを目的としている。 研究計画の第一段階にあたる平成26年度において、まずOECDと、21世紀型スキル効果測定プロジェクト(ATC21S)のコンピテンシーに関して、学会等に参加した他、発表された研究成果の入手や文献講読を通して、それらがどのような能力であるか、またどのような批判が存在するのかを把握した。 一方で、ユネスコや国連が情報化社会に生きる世界市民の育成を目指して普及活動を進めているメディア情報リテラシー(MIL)についても理解するため、2014年9月に法政大学で開催されたシンポジウムに出席し、関係者にその内実について話を伺った。 上述の世界的なコンピテンシーやリテラシーについて概観した上で、11月にはEQAOの事務局でインタビューを行い、オンタリオ州の学力や学力調査について最新の動向を聞き取った。また、学校現場がEQAOの取り組み(特に学力測定のための各種テスト)についてどのように考えているのかを考察する本研究の第二段階へ向けての人脈づくりや、文献上では得られない情報に関するインタビューをEQAOのスタッフに対して行った。これらの調査から、コンピテンシーやリテラシーについて、世界的にどのような潮流が起こっているのかを大まかに把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、当初の計画通り、コンピテンシーやリテラシーをメインに議論している学会のシンポジウムや課題研究が26年度も多く開催され、それらに出席して資料を得ることができた。次に、ユネスコでMILを推進している主な関係者とコンタクトをとることができ、OECDや21世紀型スキルと称して各地で推進されている能力開発と、MILがどのように異なるかを議論することができた。最後に、計画通りEQAOの事務局を訪問し、オンタリオ州で進んでいる学力調査の動向を聞き取るとともに、次年度以降の足掛かりをつくることができた。これらの活動から、当該年度の目的である、本研究の分析枠組みを形成するに至ることができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、「学力」の評価や学校現場へのフィードバックを実施する主体であるEQAOに段階的に焦点を移行させて質的に調査を行う。そしてEQAOが実施するリテラシーの学力調査にあたる「オンタリオ州中等教育リテラシーテスト(OSSLT)」の問題内容分析と評価の過程、教育実践の観察等、具体的な調査を行う。引き続きユネスコの国際会議にも出席し、MILの推進や能力獲得の評価方法についても検討する。 特に今後はオンタリオ州における学力調査の内実に迫るため、オンタリオ州の学校現場との信頼関係の構築が課題となる。この課題を解決するため、27年度は、28年度の本格的な観察調査に向けての前段階とし、秋に行う予定の現地調査においてはEQAOに対してより詳細な聞き取り調査や基礎的なデータ収集、コンタクトパーソンとの関係づくりに重点を置く。可能であれば、学力改善校としてEQAOで紹介されている中等学校において授業観察を行う。
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