2015 Fiscal Year Research-status Report
知識類型に応じた教育的相互行為の編成原理に関する研究
Project/Area Number |
26780430
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
森 一平 帝京大学, 教育学部, 講師 (90600867)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 知識のありかた / 学級 / 教育実践の編成技法 / エスノメソドロジー・会話分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小学校における授業場面を録画・文字転記したデータを分析することを通して、[1]知識のありかたに応じて変化する・[2]「学級」という場に固有な教育実践の編成技法を明らかにすることをめざすものである。この目的を達成するため平成27年度には、前年度から継続している小学校でのビデオエスノグラフィ調査によって得たデータを逐次分析していく計画であったが、この計画に若干の変更を加えた。それは家庭での親子間相互行為の映像データを得る機会に恵まれたためであり、この分析をおこなうことを通してそれと「学級」での相互行為のありようとを比較し、後者の特殊性をより明確に把握することを試みたためである。そのため、本年度は上記研究目的のうち[2]のほうにより重点をおいて研究を進め、小学校での調査によって得たデータについても、それが「学級」(と)の相互行為であることの特殊性を浮き彫りにするような分析をおこなっていった。 このうち、家庭での親子間相互行為を対象とした分析については国際エスノメソドロジー・会話分析学会での口頭発表に結実し、小学校における「学級」(と)の相互行為を対象とした分析については(平成27年度内には刊行されなかったが)『概念分析の社会学2――実践の社会的論理』所収の「授業の秩序化実践と『学級』の概念」という論文に結実している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、当初の計画に若干の変更はあったものの、第1にその新たな計画(家庭での親子間相互行為の分析的検討を同時に行い、それとの比較により「学級」における教育的相互行為の特質を浮き彫りにする)のもとで着実にデータの収集と分析を進め、すでに一定の成果を挙げることができていること。第2に本研究の主たる目的は上述の[1](知識のありかたに応じて変化する教育実践の編成技法を明らかにすること)であるが、この目的を果たすためのデータ分析も一定の進捗を見せており、すでにその成果として位置づけうる共著書(平成28年度内に刊行予定)の原稿が8割がたの完成をみせていること。これらの理由から、本研究は「おおむね順調に進展している」ものと判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展していると言えるものの、しかしその進みかたには若干の偏りがみられる。すなわち、平成27年度の研究の進展は「研究実績の概要」で記した目的[2]に重点を置いたものであったため、目的[1]については充分な進展を見せているとは言いがたい。 ゆえに平成28年度はこの目的[1]に重点を置き、データの分析と研究成果のアウトプットを積極的におこなっていく予定である。具体的には、平成28年度前半においては上述した共著書原稿を完成させ、(これは本研究で扱おうと考えていた教育実践の編成技法のうち「順番交替の組織」と「行為連鎖の組織」について扱ったものであるから)後半においては新たに会話における「修復の組織」に焦点を当てたデータ分析を進め、その成果のアウトプットを果たしたい。 2年に渡るフィールドワークの継続により、分析の対象となるデータはすでに充分な量蓄積されている。この点を鑑みれば、上記研究推進計画は着実に果たせるものと考えられる。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に交付された補助金は第1に、平成26年度に購入予定であったが対象モデルの販売停止により購入を見送っていたビデオカメラの購入にあて、第2に平成28年度に予定していた国際学会での報告を前倒しておこなったためその旅費にあてた。次年度使用額は、この補助金使用計画の変更により生じたものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記使用計画の変更により、必要な書籍の購入を見送った部分がある。ただし平成28年度は本研究の最終年度であるから、上記書籍の購入を検討する一方で、しかし研究成果のアウトプットを最優先におき、平成28年度交付の補助金は何よりもまずその費用にあてていきたい。
|