2015 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ合議的学校経営における学校監督および教育参加の制度と実際に関する研究
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26780436
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
辻野 けんま 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80590364)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドイツ / 合議的学校経営 / 学校監督 / 教育参加 / 学校開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツにおける学校経営を、<国家の学校監督>および<教員・保護者・子どもの教育参加>の観点から捉えるべく理論研究と現地調査とを進めた。理論研究においては、学校開発論の動向を整理しつつ、近年着目され始めている学校経営における「地域」概念や州に対する自治体の権限論などを整理しつつある。現地調査においては、2015年9月にベルリン(首都)およびブランデンブルク州(旧東独州)において学校、学校監督庁、州文部省、州立教員研修所等を訪問調査した。あわせて、関連領域の研究者へのヒアリング等を行った。 これらから得た知見としては、①校長の役割の変化や専門職化の動き、②教員の専門職論の進展、③学校監督の役割の変容、④保護者の教育参加の現状、⑤子どもの教育参加の現状、⑥学校開発論の進展、などが挙げられる。各観点にはより精緻な分析が必要な段階だが、70年代以降に制度化された民主的な学校法制が、90年代の分権化改革や2001年の「PISAショック」等を経た急激な改革の中で、どのような現状の変化をもたらしたのかに迫りつつある。 これらの観点は本研究全体において引き続き検証課題となるが、2015年度の研究ではとくに、①校長職、②教員、⑤子どもの着目した調査に進展が見られた。教育参加に基づく合議的学校経営を原則とするドイツにおいて、一部州では校長の権限強化や校長職の資格化が進行している。その一方で、実態としての教員の権限の強さがなお看取される。さらに、学校会議等の法定された意思決定の場に参加する子どもの代表者たちは、形式的な参加にとどまらず実質的にも影響力をもちえていると考えられる。 これらの知見は、ドイツ国内の先行研究と必ずしも着想を共有しない部分もあり、比較研究としての独自性を見出したいと考えている。そのためには、ドイツはじめ外国の観点からも本研究への示唆・批判を得ながら進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の進捗状況はやや遅れている。本研究が関心におく研究領域には近接・関連領域の研究が数多存在するため、それらの成果をいかにふまえつつ、本研究の現地調査等と接合させていくかが課題となっている。 これまでの主な研究成果としては、2015年度までの研究実績については、第35回国際教師教育学会大会(於:米国・モントクレア大学2015年6月21~26日)にて発表し、その内容をさらに改善した論稿を同学会研究紀要に投稿中である(論文題目「Professional Responsibility’ of School Teacher in Public Education ― Implication from Analyzing German Educational Administration from a Japanese Perspective ―」)。 課題としては、本研究の目的ともかかわっているが、単なる外国紹介にとどまらず、かつ単なる現地調査報告にもとどまらない研究成果の示し方を模索中である点が挙げられる。数多存在する先行研究・関連研究のレビューをどのような切り口から整理するかが、なお課題となっている。また、それら研究動向をふまえながら、筆者自身の現地調査との関連性に接点を見出していく必要もある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、ドイツ国内および日本の先行研究に多く学びつつも、<日本から見たドイツ>という分析視角を重視し現地調査を進めてきた。実際には、「ドイツ」と一括されるものの中にも旧東独地域や旧西独地域、南部州といった多様性があるため、それらから抽出した地域での調査を進めているが、日独の比較という観点からみればドイツに通底する状況も少なからず見られる。しかし、こうした二国間比較がもたらずバイアスについても同時に検討課題としなければならないため、過年度においては国際教師教育学会(ISfTE)等での発表により諸外国の研究者らからの示唆を得てきた。また、ドイツの研究者らとの討議・協議を通じて、比較研究上の示唆をより具体的に得るべく進めている。
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Research Products
(5 results)