2017 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国における教員評価制度に関する実証的研究
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26780443
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
藤村 祐子 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80634609)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教員評価 / 職能開発 / アカウンタビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、オバマ政権による連邦政策下においても、教職の専門職化の重要性を認識し教員評価制度改革を進めたミネソタ州の事例を取り上げ、アカウンタビリティ・システムの構築と専門職化の実現に向けた取り組み実態を分析した。 そこで、明らかになったことは、各学区で展開された教員評価制度改革において、教員評価制度の有する「総括的評価機能の限界性」が看取された点である。連邦政策によって、学力テストスコアを用いた教員の教育成果の正確な測定と評価結果の報酬や人事雇用への活用が進められたが、ミネソタ州では、学力テストスコアを用いた教員の教育成果の正確な測定が教員の報酬や人事雇用に直接的に活用されていたわけではなく、職能開発のためのデータとして活用されていた。教員評価制度を通した教員へのアカウンタビリティの追求は教育現場に馴染まず、結果として、形成的機能が重要視されている点は注目される。 また、「教員間の協働性」が進められようとしている点である。事例調査を行なったミネソタ州では、教員間の専門職学習コミュニティの構築が新しい教員評価制度のベースとされた。新しい教員評価制度の構築を、全学区へ教員間の協働性の構築を促す好機と捉え、職能開発型の教員評価制度が展開された。また、それに対し、多くの教育関係者が好意的な評価を示しており、新しい教員評価制度をツールとして、教員間に協働性の文化が根付きつつある。 さらに、「学区当局と教員団体の共同性」が効果的な教員評価制度の構築の鍵となっている点である。ミネソタ州の教員評価制度改革には、教員団体との団体交渉が影響を与えていた。学区と教員団体の政治的対立は各主体の利益を中心とする議論を生じさせる恐れがあり、効果的な教員評価制度の構築を目指し建設的な議論を展開させるには、学区と教員団体との共同性が重要となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの教員評価制度をめぐる実態分析を通して、教員評価制度の運用には「学校組織の再編化」が意図されていることが予測される。教員の能力改善には学校管理職よりも同僚教員などのリーダー教員による組織的な支援が必要であると認識され、そのための組織構造の再編が図られている。組織として、どのように変容したのか、リーダーシップの観点からさらなる実態を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
計画していた実地調査が先方の都合により日程変更されたため。
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