2014 Fiscal Year Research-status Report
人形遣いの稽古場面における身体的相互行為を起点とした「学び」の構築
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26780444
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥井 遼 京都大学, こころの未来研究センター, 特定研究員 (10636054)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | わざ / 現象学的教育学 / 人形遣い / メルロ=ポンティ / 身体哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、(1)フィールドワークの継続、(2)国際会議での発表、(3)国際会議の主催、(4)単著の出版を通して、当初の計画以上の成果を上げることができた。具体的には以下の通りである。 (1)フィールドワークの継続:淡路人形座におけるフィールドワークとして、平成26年7月、9月、10月、11月、平成27年1月、2月の期間に行った。平成22年度より継続している調査を補完、発展させることができ、十分な成果を得ることができた。 (2)国際会議での発表:平成26年8月12日~15日にカナダ(St. Francis Xavier University)で行われた国際会議、第33回IHSRC(International Human Science Research Conference)にて、個人発表および共同パネル発表を行った。 (3)国際会議の主催:平成27年1月22日に京都大学にて国際会議(1st Research Meeting, Philosophy of the Body)を企画・主催し、Bernard Andrieu教授(フランス・ルーアン大学)を招聘し、身体哲学に関する日仏間での議論・交流を深めた。 (4)単著の出版:前年度に提出した博士論文を大幅に修正し、単著『〈わざ〉を生きる身体』(ミネルヴァ書房、2015年)を出版した。これにより、成果を広く学術界、社会に還元できるのみならず、本研究を起点とした「学び」に関する議論が新たに喚起されることになるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、身体を使った「わざ」の稽古場面の観察・分析を通して、近代教育における知識伝達のあり方を根本的に見直し、新たな「学び」モデルを構築することにある。現在までに、研究は当初の計画以上に進展している。特筆すべき点として、平成27年1月の国際会議主催が挙げられる。 フランスより「身体の哲学」のパイオニアであるBernard Andrieuルーアン大学教授をお招きし、国際会議「1st Research Meeting, Philosophy of the Body: Dialogue between French and Japanese tradition of bodily performance」を開催した。当分野の研究者を日本に招くのはおそらく初めての機会であり、身体的実践に関する哲学研究の手法を深めるだけではなく、日仏の研究者の交流を促す機会となった。 本研究は、人形遣いたちの稽古場面を記述するための思想的根拠としてメルロ=ポンティを中心とするフランス哲学を据えている。今後もアンドリュー教授との交流を密にしていくことは、本研究が国際的にも高い研究水準において鍛え上げられていくだけではなく、日仏の学術的交流の発展にも寄与すると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年・28年度は、日本学術振興会の海外特別研究員の身分を兼任し、活動拠点をフランスに移す。当初計画していた、欧米圏での調査、および学会・セミネールへの参加の機会が飛躍的に向上することになるだろう。 平成27年度は、ルーアン大学やパリ大学に蓄積されている先行研究を読解し、身体的経験の記述、他者との相互作用の分析などに関する理論を整理する。平行して、アンドリュー教授らの研究チームに加わり、身体的パフォーマンス、およびスポーツ活動についての参与観察を行う。また、ヨーロッパ、北米、中国で開催予定のサマースクール・国際学会に出席し、研究発表および情報交換を行う。 平成28年度は、メルロ=ポンティなどのフランス身体論を継承する哲学者アンドリュー教授、F. ヴァレラらの共同研究のメンバーであった現象学者ドゥプラ教授(Natalie Depraz)、ユトレヒト学派の流れを汲むカナダの教育学者マーネン(Max van Manen)などの先端的研究者たちと定期的に面会しながら、「わざ」の稽古場面の分析を進める。特に、身体的実践をテーマとした日仏共同会議を企画・開催し、多分野の身体的実践とフランスの哲学的考察とを結びつけ、本研究の学術的基盤およびネットワークを強化する。また、フランスにおける身体的実践についての調査を継続し、人形遣いの「わざ」の稽古場面との比較考察を進めていく。 平成29年度は、当初の計画通り、本研究最大の目的である「身体的相互行為に基づく学びモデル」を構築する。データを補完するために、淡路島へのフィールド調査を継続して行い、彼らの意見を取り入れながらモデルを精緻化する。この議論を通じて実践的な学びモデルが鍛え上げられていくだろう。成果は、『Philosophy of Education』、『教育哲学研究』、『現象学年報』等への投稿に結実させる。
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Causes of Carryover |
B. Andrieu編『Vocabulaire des Sports』に投稿した英語論文の執筆にかかり、文字数が当初の予定よりも少なくなった。そのため、英文校閲にかかる費用が削減され、次年度使用額がわずかに生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由と合わせて、当使用額は、平成27年度に執筆予定の英語論文の校閲費として活用する計画である。なお、該当論文は、国際誌『Phenomenology + Practice』に投稿予定である。
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Research Products
(8 results)