2015 Fiscal Year Research-status Report
過疎地域の自立促進をめざした高齢者の地域づくりのための生涯学習システムの構築
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26780448
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
久保田 治助 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40560719)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者教育 / 社会教育 / 生涯学習 / 地域づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
過疎地域に住む高齢者たちが主体的に地域活性化事業を行うために 必要となる公民館を中心とした学習環境の整備と、地方行政や 他地域とのネットワークを形成するための生涯学習による高齢者学習支援プログラムの開発を行うことを目的としている。 とくに、 行政やNPОと連携を取る際に、住民全体の意見をすみやかに把握することができ るシステムとして「地域白書」を公民館主事を中心 として各地域で作成する。特に、行政やNPОと大学が連携を取ることで、高齢者による地域社会の自立促進が一層進むものと考える。 昨年度は、日本の高齢者教育および地域政策関連の文献を収集し、それらの文献を整理することで、日本の高齢者学習支援に関わる 全体像を浮き彫りにさせた。そのうえで、過疎地域への高齢者学習支援のあり方について、いかなる仮設が立てられるかの検討の作業 を行った。その際、これまで明らかになっている点、および今後明らかすべき点に整理をし、実証研究の作業の土台を作った。 今年度は、山形県金山町中田地域でのヒヤリングと地域課題の分析を行い、『中田地域白書』を作成した。その際に、地域住民への 調査が円滑に進むように、山形県金山町教育委委員会に協力を仰いた。今年度は、さらに全国の過疎地域における高齢者の教育実践を調査するために、大阪府高齢者大学校や名古屋市高年大学鯱城学園などの首都圏の高齢者大学との対比や、鹿児島県志布志市創年市民大学のような地方の特賞ある高齢者の学習実践との対比、さらに、過疎地域である日置市野首地区におけるアクションリサーチとして行った『野首地域白書』の作成を行い、過疎地域の特色ある高齢者実践の内実を明らかにするよう分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの調査・研究において、高齢化が進んでいる地域において現状課題としての高齢化対策についての学びを地域白書作成を通して、精力的に分析を行うことができただけでなく、都市部の高齢者学習との対比によって、過疎地と都市部の高齢者学習の地域差についても検討ができたと言える。特に、本年度は、都市部を中心とした鹿児島県外で積極的に高齢者教育実践を行っている地域への調査を行っただけでなく、鹿児島県内については、全国的にも注目されている志布志市の高齢者大学についての調査や、鹿児島県内のそれぞれの地域の特色と、総体的な高齢者教育実践の分析を行った。 なかでも、本年度は、鹿児島県外としては、さらに全国の過疎地域における高齢者の教育実践を調査するために、大阪府高齢者大学校や名古屋市高年大学鯱城学園などの首都圏の高齢者大学との対比を行った。鹿児島県内の過疎地域において調査としては、志布志市の創年市民大学への調査を行った。アクションリサーチとして日置市野首地区において『野首地域白書』の作成を行った。このことによって、野首地域では、さらに高齢者への対策としての地域課題を深めるために、次年度は内容を拡大した『野首地域白書2016年度版』を作成することを、地域住民が主体的に進めようとする動きが見られるようになっている。 これらの状況から、過疎地域と都市部における高齢者の学習状況の対比もできただけでなく、高齢者の学習実践が深まった継続的な学習へと広がった。 したがって、研究目的の達成にむけて、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、前年度同様に、引き続きヒヤリング調査を行うだけでなく、これまでの調査について学会発表を行ったり、これまでの調査内容についての報告書を作成する。 具体的には、九州地方や関東地方の過疎地域など学習支援の自治へのヒヤリングを行う。そのうえで、地域高齢者へのアンケート調査による、学習を行ったことによる変化の分析を行い、これまでで得られた知見をもとに、過疎地域における高齢者の学習に重要である学習構造を明らかにする。その際の学習構造の項目としては、地域振興の現状に対する高齢者の学習ニーズ、学習方法、学習観、イベント・学習会を開く際の選定方法、自治体やNPOが考えている地域の将来像、自治体と学習支援者との連携状況、高齢者観、などの項目が分析項目として上げられる。くわえて、それぞれの地域との比較を行い、地域固有の問題と共通の問題を分けて明らかにする。 この分析結果について、学会発表と報告書を作成・配布することによって、広く周知を図る。
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