2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀前半アイルランドにおける教育振興任意団体への公費補助に関する社会史的研究
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26780452
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩下 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (10598105)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アイルランド / 公教育 / 国民学校制度 / 教育史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に実施した研究の成果は、次の通りである。1)史料蒐集に関しては、国内においてはHCPPを中心とした電子データベースを使用して、議会議事録、議会委員会および政府委員会報告書を中心に、国民学校制度の成立に至る公文書史料の蒐集をほぼ終えることができた。海外ではアイルランド国立公文書館・国立図書館・Represantative Church Body Libraryを中心に、アイルランド国民教育協会等の任意団体に関する史料の蒐集を行った。また、大学図書館を通じてDublin Diocesan Archivesにカトリック教会文書に関する追加史料の複写を依頼し、無事史料を入手することができた。二次文献に関しても、予定より若干予算を超過したものの、国内外の重要な文献を中心に、順調に蒐集を進めることができた。2)研究交流に関しては、史料調査と並行して海外の研究者の助言を得、平成25年11月に史学会大会で報告した反悪徳協会に関する草稿をほぼまとめることができた。今後できる限り早い刊行を目指していく。国内では、複数の全国規模の学会および研究会に参加し、またその一部に関しては運営にも携わることで、研究者との交流を深めた。3)蒐集した史料読解に関しては順調に進んでおり、平成27年5月に開催される第65回日本西洋史学会大会近代史部会において、アイルランド国民学校制度の成立過程に関する報告を予定している。 ほぼ完成した反悪徳協会の論文に関しては、1800年代から1810年代の任意団体への補助金支出がどのような理由から正当化されたかを解明したという点で、アイルランド公教育史上の意義が認められる。また、27年5月の国民学校制度に関する報告は、国民学校制度の再解釈およびこれまで対照的に理解されてきたアイルランドとイングランドの公教育制度を統一的に理解する視座を提示するという点で、学術的な意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、史料蒐集に関しては、議会議事録、議会委員会および政府委員会報告書を中心に、国民学校制度の成立に至る公文書史料の蒐集をほぼ終えることができた。海外ではアイルランド国立公文書館・国立図書館・Church Represantative Body Libraryを中心に、キルデアプレイス協会、反悪徳協会、アイルランド国民教育協会等の任意団体に関する史料の調査・蒐集を予定通り進めることができている。蒐集した史料読解に関しては順調に進んでおり、反悪徳協会関連の史料を中心にした論文は、ほぼ完成した。これは1800年代から1810年代までのアイルランド公教育政策における公費補助とヴォランタリ・スキームが組み上げられた歴史的経緯を解明するものである。また、1820年代の公教育政策に関する史料蒐集・読解も順調に進み、平成27年5月に開催される第65回日本西洋史学会大会近代史部会において、アイルランド国民学校制度の成立過程に関する報告を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、まず反悪徳協会に関する論文を完成させた後、早い段階で国内の全国学会もしくはIrish Education Reviewなどの海外ジャーナルに投稿する。続いて、5月に富山大学で開催される第65回日本西洋史学会大会近代史部会において、「1820年代アイルランド民衆教育における公共性の変容―1825年アイルランド教育調査委員会報告書を中心に」というタイトルでの学会発表を行うことが決定している。発表の後、寄せられた議論やコメントを踏まえてできるだけ早く論文を執筆・発表することを目指す。 今後の研究については、国民学校制度の事実上の宗派化・中立原則の退潮の契機となるnon-vested schoolの導入過程についての調査に着手する。具体的には、1830年代および40年代のHCPPを始めとする公文書、およびアイルランド長老派関係の史料を蒐集することによって、non-vested schoolが国民学校制度内部に導入される具体的なプロセスを解明する。具体的には、平成27年度中に主要な史料調査・蒐集を終え、平成28年度に学会報告および論文の執筆と発表を目指す。
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Causes of Carryover |
海外の研究者に対して、論文のレヴューやコメントに対する謝金を計上していたが、お二方が謝金の受け取りを固辞されたこと、また海外の史料館に史料複写を依頼した際、そちらも電子データを無料で提供いただき「その他」で計上した複写予算を使用せずに済んだことを主たる理由として、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、研究の進展の結果、複数の論文を海外ジャーナルに投稿することが可能になったため、その英文校正にかかる費用として人件費・謝金に次年度使用額を繰り入れて使用することにする。
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