2016 Fiscal Year Research-status Report
19世紀前半アイルランドにおける教育振興任意団体への公費補助に関する社会史的研究
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26780452
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩下 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (10598105)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アイルランド / 公教育 / 公費助成 / 任意団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に従って、当該年度は過去二年間の研究成果を論文その他のかたちで発表することを予定していた。したがって当該年度は海外へ渡航して史料調査を行うことはせず、主として論文執筆と学会報告を行った。具体的には、①「反悪徳協会」に関するモノグラフ、②「国民学校制度」に関するモノグラフ、③19世紀前半のアイルランドにおける就学率に関するレヴュー論文の三本を執筆、投稿することを予定していた。③に関しては、19世紀前半アイルランドにおける就学率のレヴュー論文を、青山学院大学教育人間科学部紀要に発表した。近年発表された、アイルランド就学率に関する画期的な研究成果をレヴューしたものであるが、単なる内容紹介ではなく、数量的な就学率研究の動向から、これまでの制度政策史研究を中心としたアイルランド教育史の通説がどのように刷新され、書き換えられる可能性があるかを論じた。また②に関しては、2015年度に西洋史学会で行った報告をもとにしつつ、新たな史料や先行研究の再蒐集、再検討を行った上で論文を執筆し、学会誌に投稿した。これらは、19世紀アイルランドにおける公費助成(国家介入)の変容と公教育制度の展開を解明するという本研究の中核を構成する研究成果である。①に関しては、当該年度での論文化が若干遅れている。学会報告としては、アイルランドとイングランドの公教育制度の展開を比較しつつ、近代イギリスにおける教育ヴォランタリズムの歴史的条件について論じる報告を進化経済学会において行った。これは、本研究の成果をブリテン史のなかに位置づけるための作業としての意義を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画では、当該年度中に、過去二年間における研究の成果をすべて論文のかたちで発表することを予定していたが、論文として発表できたものは一本に留まった。学会報告や学会誌への投稿と修正要求などで指摘された問題点について、新たな史料や先行研究の再蒐集、再検討が必要となったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、研究計画にやや遅れが生じている。研究予算として計上していた研究費も、追加の史料調査等を実施しなかったため多少の残額が発生している。これらを踏まえて、研究期間をもう一年延長し、研究課題を進めることにする。具体的には、2017年度まで研究期間を延長し、17年度中に論文化していない研究成果を論文として執筆・公表すること、および必要に応じて追加の史料・資料蒐集と調査を行うように、研究計画を変更することにする。
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Causes of Carryover |
論文の執筆が遅れているため、英文校正を始めとする謝金や、予定していた論文の印刷・郵送費等を使用することができず、残額が発生している。また、本研究に必要な文献の一部を大学からの教員研究費で購入したこと、海外に発注を予定していた史資料の一部がデジタル資料等のかたちで入手できたことから、物品費で残額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究期間を予定よりも一年延長したため、生じた次年度使用額は論文執筆・印刷・郵送費、および追加の史料調査、海外研究者からの助言を得るための謝金等に使用する。
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