2014 Fiscal Year Research-status Report
植民地朝鮮における教育政策の展開と「教育実践研究」の介在
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26780455
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山下 達也 明治大学, 文学部, 講師 (00581208)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植民地朝鮮 / 植民地教育 / 教育実践研究 / 朝鮮の教育研究 / 京城師範学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる平成26年度は、おもに植民地期朝鮮における師範学校および附設研究会の「教育実践研究」活動についての調査・分析を行なった。 具体的には、官立京城師範学校附属初等学校内に設置された朝鮮初等教育研究会を調査・分析の対象とし、その活動について可能な限り跡付けた。1928年4月~1941年6月まで朝鮮初等教育研究会がほぼ月刊で発行した『朝鮮の教育研究』全号を入手し、掲載された論考、教育実践報告、教材研究等をその内容に応じて分類・整理したうえで分析し、量・質の両面から朝鮮における「教育実践研究」活動の特徴に迫った点は本年度における最大の成果である。敷衍すると、『朝鮮の教育研究』に掲載された3,105篇の投稿を「教科・科目教育関係」、「学校・学級経営関係」、「児童・生徒関係」、「教育一般」、「その他」という5項目に分類し、関心の傾向を把握することに加え、「教科・科目教育関係」のものをテーマ・内容に応じてさらに各教科に分類して関心の偏りやその変化を明らかにした。また、国語(日本語)教育研究と複式教育研究の担い手や質的特徴に着目し、朝鮮における「教育実践研究」の特徴を見出した。これらには、「内地延長主義」からの脱却といわば「朝鮮型教育実践研究」の確立というスタイルが通底しており、こうした研究が、「時勢及民度ニ適合」を基調とする朝鮮総督府の教育政策を補強し、支え続けたものであったことを明らかにした。こうした研究の成果は、教員らによる教育実践研究が、植民地教育の展開過程を捉えるうえで決して看過できない極めて重要な営みであったことを示すものであり、従来の朝鮮教育史研究や植民地教育史研究に新たな知見を加えるものといえる。 さらに日本「内地」における「教育実践研究」に関する調査にも取り組んでおり、それらとの比較を通じた「朝鮮型教育実践研究」の特徴を浮き彫りにする作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度となる平成26年度は、研究実施計画の段階で予定していた資料調査を国内外にて行なうことができ、資料の閲覧・収集作業もおおむね計画通りに進行している。 収集した資料の整理・分析には時間を要するため、得られた成果をまとめて発表するまでには至っていないが、当初より本年度はおもに資料の収集と分析に注力する計画であったため、研究はおおむね計画通り順調に進展しているといえる。 資料の収集・分析の結果として、朝鮮における「教育実践研究」活動についていくつかの知見がすでに得られており、次年度以降に進める研究実施計画へのスムーズな接続が可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、特に2年目となる平成27年度はおもに朝鮮教育会や朝鮮総督府主催の教員講習会における「教育実践研究」の扱われ方について調査・分析を行なう。具体的な推進方策については以下のとおりである。 1.『文教の朝鮮』を中心に朝鮮教育会の「教育実践研究」活動についての資料を収集・分析する。雑誌、活動記録については国内での調査に加え、韓国での資料閲覧・収集を行なう。 2.現職の教員を対象とした朝鮮総督府主催の教員講習会に着目し、その内容と「教育実践研究」との関連性について検討する。おもに『朝鮮総督府官報』や各講習会の記録、参加者による記録を収集・分析することで進める予定である。 こうした研究の推進により、教員らによる「教育実践研究」の成果や方法がどのようなかたちで教員たちに共有されるとともに朝鮮全土あるいは各地域に伝播したのか、またそれらの研究がどのように評価されていたのかといった点についての知見を得る予定である。 また、研究の経過や成果については関連学会、研究会にて発表し、議論を深めることによって新たな課題の発見につなげることとする。
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Causes of Carryover |
本研究課題の調査にて収集した資料のデジタル化・管理・分析に必要なコンピュータを購入する予定であったが、紙媒体の資料の収集・整理に時間を要したため未購入であることが主たる理由である。 また、調査時にアルバイトを雇い、補助作業を委託する予定であったが、作業はすべて研究代表者が行なったことも次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度早期に収集した資料のデジタル化・管理・分析に必要なコンピュータを購入する。 また、資料の整理や研究成果をまとめる際の補助作業のためにアルバイトを雇用する。
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Research Products
(3 results)