2014 Fiscal Year Research-status Report
明治前期における公立「先進校」の設立と地域的支持基盤の形成に関する実証的研究
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26780461
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Research Institution | Biwako-Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 敦史 びわこ学院大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40645305)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公立小学校 / 天皇巡幸 / 学校運営 / 地域利害 / 天皇像 / 地域社会 / 明治前期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治前期に、地域に「先進的」な公立小学校が設立され、住民の支持基盤が形成される過程を、地方巡幸での天皇の訪問校に焦点をあて検討する。その際、(1)特定の公立小学校に巨額の民費が投下され、荘厳な校舎が建てられる際の人々の学校への「期待感」のありよう、(2)地方巡幸での天皇の訪問を経て、その学校が地域の「特別な学校」と看做されて行われる学校運営の特色、の2点に留意して検討を行う。如上の研究目的を達成するために、本年度は研究計画に従い、以下の作業を進めた。 ①明治前期における地域社会の形成と公立小学校の設立に関する先行研究と関連資料の整理。 ②山形県と庄内地方(旧酒田県)の、教育、政治、巡幸(学校訪問関係)関連の資料の確保・整理・検討と、酒田と鶴岡の有した当時の地域的な教育課題、政治課題の概要の把握。 ③朝暘小学校(鶴岡)、琢成小学校(酒田)に関する、学校関係資料の検討と学校史の概要整理。 上記3点に関しては、北海道立図書館北方資料室、青森県立図書館、青森県弘前市立図書館、秋田県公文書館、国立国会図書館憲政資料室所蔵の資料を収集・整理し、明治10年前後の北海道・東北各地域の政治史、教育制度史に関する概要を把握した。さらに明治9年と14年に実施された北海道・東北巡幸に関する資料の収集・検討を行った。庄内地方に関しては、鶴岡市立図書館、酒田市立図書館光丘文庫所蔵の資料群を収集・整理し、朝暘、琢成両小学校の学校史の概要が把握できた。さらに本年度は、山形での三島通庸の県政運営の特色を明確化する必要から、上記3点に加えて、福島県郡山小学校の明治10年代における学校運営の特色と福島県令でもあった三島の県政運営との関係性についても検討を行った。その結果「特別な学校」と見做された天皇の訪問校が地域利害(県庁移転問題)のなかで人々から抱かれる「期待感」と、そこでの役割の一端が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、明治前期における地域の旧来秩序の解体と再構成に関する研究史のレビューに時間をかけた為、一部計画内容を消化し切れない部分もあった。しかし、上記の課題については、本研究全体の前提に関わるテーマとなるため、今後も計画の進捗に併せた慎重な検討を継続する予定である。更に本年度は、本研究で扱う山形県庄内地方の検討を行う際に、周辺地域の動向として重要な示唆が得られるとの判断から、明治10年代における福島県郡山小学校の事例にも検討を加えた。上記の検討は、本研究の研究目的を達成する上で不可欠な作業であり、そこで生じた研究計画の若干の遅れも今後の研究期間のなかで修正可能な範囲内であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、14年度に整理した地域史、学校史の概略的知識をベースとして、当該テーマに関わる各論的な検討を進める。更に、14年に検討を進めた郡山小学校の事例に関しては、学会誌への投稿等を行い、研究成果を公開するとともに、本研究で扱う山形県庄内地方の検討を進める上での参考事例としての位置づけを確定する予定である。上記の検討にあたっては、引き続き、研究枠組みや周辺諸地域との関連性、学校史に関する諸事実の検討などの基礎的作業を併せて進めることで、分析精度の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
2014年度は、収集資料の整理・プリント等に時間を割き、現地調査が予定ほど実施できなかった。また機器等も従来使用している旧型の物を用いた為、研究費に残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度研究費の残余分を2015年度に持ち越すことで、現地調査の充実による詳細資料の確保・整理を行い、更にOA機器等の購入による作業効率の向上を図り、研究目的の達成を目指す。
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