2015 Fiscal Year Research-status Report
イギリス成人教育の一展開―バーミンガム大学ソーシャルワーク教育コースを中心に―
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26780468
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Research Institution | Hijiyama University Junior College |
Principal Investigator |
土井 貴子 比治山大学短期大学部, その他部局等, 講師 (00413568)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウッドブルック / バーミンガム大学 / ソーシャル・スタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の本年度は、主としてバーミンガム大学に残る学長の報告書や委員会の史料等を用いてソーシャル・スタディ・コースの導入過程とコースの内容を分析した。 バーミンガム大学は、ソーシャル・スタディ・コースを、労働者への高等教育の普及を目的として設立された労働者教育協会の初期の活動を支援する過程で同協会と協力して計画し、開始した。バーミンガム大学は、コースを充実させていくなかで、セツルメント運動との連携を強め、コースをディプロマ・コースへと拡充した。最初のソーシャル・スタディ・コースは、バーミンガムでの労働者教育協会の年次大会の開催準備がすすめられるなかで、1905年に企図され、実施されたのであるが、大学人たちは、市民の問題とどのように向き合ってくのかを模索するなかでその方途の一つとして労働者成人の教育を支援し、かつ社会の問題を探求するコースの実施という新たな取り組みを開始した。この頃、バーミンガムでは、Women's Settlementが1899年に、Woodbrooke Educational Settlementが1903年にはじまっていた。前者をバーミンガム大学の教授夫人たちが、後者をクウェーカーやキャドベリー家が支援しており、大学は、両セツルメントと地域の人的ネットワークのなかで結びついた。そして次第に、ソーシャル・スタディ・コースを労働者への高等教育の支援とを区分し、社会の問題を探求するディプロマ・コースとして展開した。バーミンガム大学は、バーミンガムにおいてこの時期の成人教育の特徴的な活動を展開した労働者教育協会とセツルメント、この両者の活動とつながり、前者から後者へと連携の重心を移行しつつ、成人教育の進展のなかでソーシャル・スタディ・コースを展開した。同コースでは、理論だけでなく実践が重視され、その方途として大学外の機関と連携した学外実習が設けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、バーミンガム大学に所蔵されているJames Rendel Harris Papersの調査・撮影を終え、分析をすすめている。ソーシャル・スタディ・コースを大学と連携してすすめた成人教育機関の一つであるウッドブルックの教育ディレクターが残した史料であり、学外実習を担当した講師が作成した学生の報告書等が含まれる。引き続き読みすすめ、学生の姿をおっていきたい。 第2に、ソーシャル・スタディ・コースの設立過程をバーミンガム大学の議事録、カレンダー、報告書といった大学側の史料と、労働者教育協会の年次報告書や機関誌といった成人教育の史料とをつきあわせながら分析している。労働者教育協会の年次大会の開催を契機にソーシャル・スタディ・コースがスタートしたことは先行研究で指摘されてきたが、年次大会開催前にすでに大学の評議会でコースの実施が承認されていたことが確認できた。大学と労働者教育協会との連携のもと、誰がどのような人的ネットワークのなかでいかなる意図のもとコースを計画、実施したのかについて引き続き分析をすすめていく。 第3に、ソーシャル・スタディ・ディプロマ・コースの内容を、大学のカレンダーや報告書、ウッドブルック・カレッジの年次報告書やパンフレットを用いておおむねあきらかにしている。大学での講義、カレッジでの講義、そして学外実習の3本立てで構成される。大学とウッドブルック・カレッジとの連携を中心にまとめている。バーミンガムでの成人教育の展開をふまえて、実習先である福祉保健施設や教育施設、行政機関との連携について今後考察を深めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、バーミンガム大学におけるソーシャル・スタディ・コースの展開を、成人教育史の文脈において、とくに労働者教育協会並びにセツルメントとの連携という視点から分析し、その特質を明らかにするものである。この基本的な研究計画に変化はない。 今後は、第1に、これまで分析をすすめてきた、コースの設立過程とコースの教育についての成果を公にしたい。この時期の成人教育の展開、加えて国家とボランタリ・セクターでの福祉の進展、この2つを主たる背景として考察をすすめたい。社会教育学系のジャーナルでの論文化を検討中である。 第2に、ソーシャル・スタディ・コースで学んだウッドブルックの学生について分析をすすめ、教育史の学会で報告をする予定でいる。今年度までで調査を終えたJames Rendel Harris Papersを主たる史料として、コースの学習のありようを特に学生の姿を中心に考察する。労働者成人教育運動からスタートした同コースは、セツルメント運動との関わりのなかで、かつディプロマ・コースとして展開していくなかで、ソーシャル・ワーカーの養成へとその重心を移していった。こうしたコースの変化のなかで学生の姿を描き出せるよう努めたい。
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Causes of Carryover |
本年度は、物品のうち洋書・洋古書の入手が一部間に合わず、次年度になった。洋古書は、発注から納品までに時間がかかるのと、支払いのルール上、手続きに時間がかかるため間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の経費は概算で物品費40万円、旅費50万円、人件費6万円、その他5万円を見込んでいる。旅費には、年度の当初に調査し残した文献の調査・撮影を実施する海外旅費と、研究の成果を学会等で発表するための国内旅費をあてる予定である。また、物品費は、前年度から引き続き洋書・洋古書を購入予定である。
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