2015 Fiscal Year Research-status Report
小学校教員検定試験における「教育科」試験問題の分析――兵庫県の事例を中心に――
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26780469
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Research Institution | Yamaguchi College of Arts |
Principal Investigator |
山本 朗登 山口芸術短期大学, その他部局等, 講師 (60611704)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教員養成史 / 小学校教員検定 / 試験検定 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目にあたる本年度は、試験問題の本格的な分析に入るための資料収集と分析に必要な事前作業を行うことを主な課題とした。その内容としては、①検定試験に関わる教科書の収集と分析、②教育関係雑誌等に掲載された検定試験関係記事の収集を継続、③全国的傾向を明らかにするための問題集の収集の継続、以上の3点である。 ①に関しては、兵庫県において検定試験の参考書、あるいは師範学校の教科書として採用される期間が長かったと考えられる大瀬甚太郎執筆の教科書を中心に収集、比較対象とする同時期に発行されていた他の著者の教科書も含めて数十冊の収集を行った。時期によって、国立国会図書館の「近代デジタルライブラリー」サービスから多く収集・閲覧できるが、各教科書に多数の修正版があることから、今後も購入等によって収集を継続したいと考えている。またその分析については、採用当初の計画にはなかったものの、分析の基準となる教科書への理解を深めるため必要であると考え、昨年度から計画に加え、検討を始めている。教科書は複数の分野に分けて出版されているが、全分野の教科書分析を同時に行っており、多少時間がかかっている。 ②に関しては、愛媛大学(当時。現愛知教育大学)釜田史講師とともに、検定関係の記事が掲載された雑誌『教員と文検』(大明堂)について、雑誌の内容を検討するため、その初期段階として目次集成を行い、雑誌に掲載された受験体験記等の記事についてその傾向を分析していたので、これを投稿した。 ③に関しては、兵庫県の試験問題を掲載していると思われる試験問題集の収集を継続した。比較対象となる他の道府県の試験問題の収集も同時に行ったが、新たに残存・所蔵が判明することも多く、今後もその都度収集を継続していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の計画については、①に関しては、年度当初計画とはやや作業順序が異っており、現在は全分野の教科書分析を優先して進めている。分野別の集中的な分析には入っていないが、全体として進めているため、進捗の程度としてはほぼ同等と考えている。年度当初の予定を変更し、各分野ごとに教科書の分析を行わず、全分野の分析を優先することとしたことについては、当時、一人の著者が複数の分野の教科書を執筆し「シリーズ化」することが多く、全体として把握した方が著者ごとの執筆傾向をより理解しやすいのではないかと考えたからである。 ②については、予定のとおり投稿を行った。雑誌の収集についても順調であるが、検定関係の記事がわずかでも含まれる可能性がある雑誌は多数存在することから、必要に応じて今後も継続する。③については、予定していたものとしては概ね順調であり、今後も必要であれば継続する。 以上のことから「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
検定試験で参考書とされた教科書、あるいは師範学校で採用された教科書数は膨大であり、一つひとつの比較にはかなりの時間がかかると予想される。今後当初計画より遅延する可能性が高いと考えられるが、教科書分析をないがしろにして試験問題の分析を行うことは、形式的には早期に作業を完了できても内実として十分な分析に至らないと考えるため、時間をかけても入念な分析作業を行いたいと考えている。分析にあまりに時間がかかりすぎる場合は、教科書の分析範囲を限定することも考慮に入れる。 また、それらの教科書がなぜ採用されたのかもわかる範囲で情報を集めたい。特に大瀬甚太郎の教科書群については、兵庫県での採用期間が長いことから、採用理由が判明すれば分析の際に重要な意味を有する。ただ、単にベストセラーだった、入手がしやすかったなどの、教科書の内容に直接起因しない理由も考えられ、また情報も限られるであろうと思われるので、可能な範囲で、師範学校教員の手記、雑誌投稿文等を手に入れ調査する。 上記教科書の分析が完了次第、順次、各分野の試験問題の分析に入りたい。
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Causes of Carryover |
検定試験の参考書あるいは師範学校用として採用された教科書、および試験問題集を購入・収集するにあたり、比較対象するための道府県の選定を現在行っている。すべての道府県の試験問題・教科書を収集することは現実的でないことから選定の必要があるが、どの道府県にどの程度の試験問題が残っているか、兵庫県の試験問題が残存している時期と同じ期間の試験問題を収集できるか、その時期の教科書が手に入るか等に注意を払う必要があり、選定に時間がかかっている。このため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
兵庫県の教科書や全国的な試験問題集の収集は進んでいることから、同じ教科書や試験問題を収集してしまわないよう、県別、地域別の教科書・試験問題集等の発行時期を参照して収集すべきものを絞り込み、できる限り平成28年度中での収集を行いたい。
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Research Products
(1 results)