2014 Fiscal Year Research-status Report
多文化国家オーストラリアにおける汎用的能力育成のための教育政策・実践に関する研究
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26780471
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 麻衣子 北海道大学, 留学生センター, 准教授 (10545627)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教育学 / 教育政策 / 汎用的能力 / ナショナル・カリキュラム / 全国学力調査 / オーストラリアの教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年各国でその育成の必要性が指摘されるリテラシーやICTスキル、問題解決能力等の「汎用的能力」が、多様な背景を持つ子ども達にどのように教えられ、評価されているのか、またそれが実際に子どもの教育に従事する教員に求められる資質・能力にどのような影響・変更をもたらしているのかを、多文化国家オーストラリアを事例に検討することにある。具体的には、近年、教育成果の向上のために大規模な教育改革に取り組むクイーンズランド州を主たる対象として、同国で2013年から段階的に導入が進められているナショナル・カリキュラムの運用過程を、その柱の一つである汎用的能力の育成に注目して整理・分析・検討する。 平成26年度は、これまでの研究を基盤として、関連先行研究の整理・分析とともに、必要とされる政策文書・資料等を、主としてインターネット等を活用し、収集・整理した。日本比較教育学会第50回大会(7月,名古屋大学)では、ナショナル・カリキュラムの導入に対する各州の反応と、ナショナル・カリキュラムを基盤に開発・整備が進められる各州カリキュラムにおける汎用的能力の扱いとを整理・分析し、報告した。 また、8月には、ニューサウスウェールズ州シドニー、ビクトリア州メルボルンおよびクイーンズランド州トレス海峡島嶼地域を訪問し、これまでに収集した政策文書・資料等の整理から浮かび上がった疑問点等を明らかにすべく、図書館等で関連資料の収集を行うとともに、関係者への聞き取り調査等を行った。トレス海峡島嶼地域では、子ども達の基礎学力向上のため、2008年以後、大規模な学校制度改革が断行されている。その状況と課題について、『藤女子大学紀要人間生活学部紀要』第52号(2015年)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初計画どおり、これまでの研究を土台として、先行研究やインターネット等で収集できる政策文書・報告書等をもとに、オーストラリア全州のナショナル・カリキュラムの導入・運用状況を整理・分析した。また、資料収集の都合上、特定州ではあるものの、各州カリキュラムにおける汎用的能力の位置づけも整理した。 当初計画では、2下旬から3月上旬にかけて、資料・情報収集のための訪豪を予定していたが、他用務・調査との兼ね合いから、8月26日~9月6日の日程で、メルボルン、シドニー、トレス海峡島嶼地域木曜島を訪問した。メルボルンでは、ビクトリア州カリキュラム評価機関(Victorian Curriculum and Assessment Authority:VCAA)を訪問し、同州カリキュラムでこれまでその導入が延期されていた汎用的能力の扱いについて、担当者に話をうかがった。また、メルボルン、シドニーでは、図書館等をまわり、関係資料・論文等の収集を行った。トレス海峡島嶼地域木曜島では、地元の教育協議会(Torres Strait Islander Regional Education Committee:TSIREC)、学校(初等学校および中等学校)を訪問し、ナショナル・カリキュラムの導入による影響等について、関連資料・情報の収集を行った。 なお、これらの成果は、日本比較教育学会第50会大会(7月,名古屋大学)、『藤女子大学紀要人間生活学部紀要』第52号(2015年)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、先行研究の整理および関連資料・情報の収集・整理・検討を行う。また、連邦および各州政府・教育省がナショナル・カリキュラムの運用をとおして推進する汎用的能力の育成が、各学校でどのように実施および評価されているのかを、各学校が公開する教育計画・年報等の分析、授業の参与観察、校長・教員等の関係者に対する聞き取り調査から整理・検討する。その際、これまでの研究の継続性および社会的・経済的環境のちがいを考慮して、都市部(ブリスベン)、地方部(タウンズビル、ケアンズ)、遠隔地(トレス海峡島嶼地域)の学校を事例とする。 また、学校に関する調査と並行して、ナショナル・カリキュラムの運用が、教員の資質・能力に与える影響・変更についても検討を開始する。具体的には、大学が実施する教員養成プログラムの枠組みと採用後の教員の職能形成を管理するクイーンズランド州教員協会(Queensland College of Teachers:QCT)の取り組みを中心に、政策的・制度的動向を追う。
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Causes of Carryover |
平成27年2月下旬から3月上旬にかけて、シドニーおよびトレス海峡島嶼地域木曜島を訪問し、関係資料の収集・聞き取り等、調査を行う予定にしていたが、体調不良のため、調査出張自体をキャンセルせざるを得なかったため。ただし、メールでのやり取り等により、必要な情報の一部は収集することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
可能であれば、なるべく早い時期に、昨年度実施できなかった現地調査を行う。
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