2018 Fiscal Year Research-status Report
国際比較にみる日本の学力格差の構造の解明―差異化と平等化のバランスに着目して
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26780482
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 いづみ 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30709548)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東アジア / 日本 / 学校外教育 / 国際学力調査データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代日本における学力格差のあり方を、経年変化および国際比較の視点から実証的に明らかにすることで、日本の教育システムについて理論的・政策的示唆を提示することを目標としている。2018年度の研究実績としては、国際学力調査データを用いて、諸外国の学校外教育の実態を明らかにしたことが挙げられる。日本で学習塾や家庭教師として知られる学校外教育は近年世界的な広がりを見せており、各国・地域において、どのようなタイプの学校外教育がどの程度利用され、それが利用者の学力や社会経済的背景とどのように結びついているのかを、国際学力データを用いて分析した。その結果、多くの国・地域において、学校外教育は家庭背景が豊かだが比較的学力の低い生徒に利用される傾向がある一方、日本を含む東アジア地域をのぞいては、学力の高い生徒も利用するケースは必ずしも一般的でないことがうかがえた。こうした学校外教育の存在は、学力格差をとらえる上でも無視できないテーマであり、学校外における追加的・補完的な学習機会として、今後も理論的かつ実証的に検証を進めていくことが必要だと考える。こうした研究の一環として、諸外国における学校外教育の動向や政策的対応をまとめた海外文献をレビューする作業も行った。前年度の後半~今年度の前半まで、産休・育休により研究を中断していたため、平成31年度を最終年度として、今後も残りの研究課題を遂行していく。国際的に見た際の日本の学力格差の相対的な大きさや特徴をまとめた論文、日本における学校間格差の内実を、学校レベルの変数の影響に着目して解明した論文、および日本における学力格差の経年変化を明らかにした論文を今後発表していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の後半から今年度の前半までの約1年超の期間について、産前産後休暇および育児休業のため、研究を中断していたことが大きな理由である。おもに研究中断以前の期間までに進めていた研究の成果を用いることで、研究実績の概要で述べた学会報告等を行うことができた一方で、研究再開後はその間に進んだ研究動向の確認などの必要もあり、まだ実質的な成果につながる業績が十分に出せていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の前半までは育児休業により研究を中断していたため、平成31年度を最終年度として、残りの研究課題を遂行していく。残された課題は、これまでの成果のうち学会報告を行ったものを軸として、研究論文としてまとめることである。第一に、国際的に見た際の日本の学力格差の相対的な大きさや特徴をまとめた論文について。第二に、日本における学校間格差の内実を、学校レベルの社会経済的地位の影響と、学校組織や教育実践の影響それぞれのメカニズムを考慮しつつ解明する論文について。第三に、日本における学力格差の経年変化を明らかにした論文について。学力をテーマとした研究は、この間にも国内外で多く発表されている。そうした様々な研究もレビューしつつ、未踏の課題を整理し、本研究ならではの知見を成果として発信していきたい。
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Causes of Carryover |
(理由)前年度より、若干の差額を繰り越すこととなった。この理由は、育児休業により研究期間をひきつづき半年間ほど中断したためである。 (使用計画)平成31年度の報告書刊行費にあてたいと考えている。
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