2015 Fiscal Year Research-status Report
明治期から戦前期にかけての児童虐待問題と日本の近代的子ども概念の構築に関する研究
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26780483
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
高橋 靖幸 立正大学, 社会福祉学部, 助教 (30713797)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 児童保護 / 子ども史 / 近代的な子ども概念 / 社会構築主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、国立国会図書館を利用して、昭和5年4月から昭和8年12月までの新聞5紙で報じられた児童虐待問題に関わる記事の取集を進めた。これらの時期の新聞記事に関して、昭和5年は1年分の新聞記事の収集をほぼ完了させ、また昭和6年、7年、8年に関しても主要な記事の収集を終えた。同時に、明治期、大正期の新聞記事に関しても、新聞2紙の記事収集に取り組んだ。これらの記事に関しては、時系列順にファイルへの保管ならびにリスト化を試み、通時的な分析・考察に取り組んだ。 また、雑誌『児童研究』と『社会事業』(「社会事業彙報」を含む)の2誌について、同じく明治期から昭和戦前期までに発表された児童虐待に関わる記事の収集を進め、おおよそ全ての記事の収集を完了させた。上記2誌に加えて、『児童保護』や『社会福利』などの社会福祉系の雑誌を対象にして、児童虐待に関わる記事を収集した。これら雑誌記事の収集では、児童虐待記事のみならず、児童保護に関わる記事を広く収集するよう取り組んだ。これら収集された記事については、文献一覧を作成するとともに、ファイルへの保管を行った。 加えて、児童虐待の問題構築がどのようなかたちで進行したのかをさらに広い視野で確認するため、社会事業に関わる諸団体や関連省庁等の報告書や出版物ならびに当時の研究者や社会運動家の書籍を多く収集した。平成27年度の資料収集と分析はこの報告書や出版物を対象に多くの時間を費やすこととなった。これら過去の文献や史資料を収集しながら、明治期から昭和戦前期にかけての社会事業協会や政府内の内務省社会局の動向を整理して、その内容を年表にしてまとめる作業を行った。 こうした史資料の収集と分析と同時に、論文の執筆を行った。1年間の研究成果を2つの論文にまとめて、2つの研究学会の紀要雑誌へ投稿を試みた。しかしながら、2つの論文とも残念ながら採択には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の達成度は、当初の予定通り、交付申請時に提出した「研究の目的」における以下の4つの課題においておおむね順調に進展している。まず、①「子ども研究の理論・方法の検討」においては、欧米の子ども研究の理論的検討に加えて、子ども史研究の動向についても目を向けて文献購読を進めた。また、②の「児童虐待を問題として語る社会の様相の解明」は、昭和5年から昭和8年までの新聞5紙の収集がおおよそ完了して、これらの記事の比較検討がさらに充実した取り組みとして実現できている。また社会福祉系を中心として幅広い雑誌記事の分析や、当時の研究者や社会運動家たちが出版した書籍の分析を進めており、児童虐待問題に対する社会の反応や対応の推移を詳細にまとめ上げることができている。さらに、③「児童虐待問題への社会事業団体や政府の介入に関する分析」についても、社会事業協会や内務省社会局等の実施した調査記録や活動記録をまとめた報告書や出版物を広く収集しており、児童虐待問題への介入の全貌が明らかとなってきている。そして、④「児童虐待問題における法制化の過程の分析」では、新聞・雑誌記事や報告書・出版物等の分析に加えて、帝国議会の議事録や児童虐待問題に関わる政府関係者の書籍等を収集して、その内容の分析と考察を進めている。これらの史資料の収集と整理は限られた時間の中で、効率的かつ継続的に進めることができている。しかしながら、それらの成果を(紀要雑誌への投稿を試みたものの)論文発表というかたちで実現することができなかったため、この点については平成28年度の課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究推進方策については、交付申請時の「研究計画・方法」の通り、計画最終年度である今年度も史資料の収集をできる限り継続しつつ、研究成果をまとめる作業に取り組む。それぞれ単独に進めてきた4つの課題について有機的な関連づけを行い、ひとつの研究成果として発表を行う。具体的には、研究学会の大会等での口頭発表ならびに論文発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度予定していたPC等の大物物品の購入が実現しなかったため、次年度使用額が生じた。また予定していた複数回の調査出張が1回しか実現しなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の主要な調査が国立国会図書館での新聞、雑誌、調査報告、活動記録等の収集である。研究専用で使用するメインのPCがなく、これまで旧式のラップトップ型のPCを使用してきたので、資料整理等がままならない現状である。次年度は、早急にPCを購入して研究のさらなる効率化を図りたい。また調査出張についても、日本各地に存在する史資料の収集のために実現できるよう調整を行いたい。
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