2016 Fiscal Year Research-status Report
明治期から戦前期にかけての児童虐待問題と日本の近代的子ども概念の構築に関する研究
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26780483
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
高橋 靖幸 新潟県立大学, 人間生活学部, 講師 (30713797)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 児童虐待 / 児童保護 / 児童労働 / 貰い子殺し / 子ども観 / 子ども史 / 社会構築主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、国立国会図書館を利用して、昭和6年6月7月11月、昭和7年7月、昭和8年3月4月9月10月の新聞5紙(東京日日新聞、都新聞、国民新聞、萬朝報、報知新聞)で報じられた児童虐待問題に関わる記事の収集を終えた。これらの新聞記事は、児童虐待防止法成立過程における各種会議、法政案の決定、帝国議会での審議と可決、並びに法律の公布、施行、実施に関連する時期のものであり、児童虐待問題の議論から浮かび上がる子ども観を明らかにする上で、非常に重要な資料として位置付けることができる。これらの記事に関しては、昨年度に引き続き、時系列順にファイルへの保管並びにリスト化を行い、通時的な分析と考察に取り組んだ。 また第64回帝国議会の衆議院貴族院議事録や各種委員会での会議録についても収集と整理を行った。今後はこれらの資料についての分析と考察をさらに深める必要がある。加えて、児童虐待防止法の各種公文書についても収集と整理を行った。特に児童虐待防止法の関係法令や例規通牒などについては多くの資料が存在しており、これらの分析と考察が今後の課題としてあげられる。加えて、児童虐待防止法に関連する公報や雑誌記事など、多様な資料についての収集と整理を行った。特に雑誌記事のついては、昨年度に引き続き、児童虐待防止記事のみならず、児童保護に関わる記事を広く収集するよう取り組んだ。 こうした資料の収集と分析と同時に、論文の執筆を行った。昨年度からの成果と今年度の研究をひとつの論文にまとめ、それを「社会問題としての児童虐待の構築にみる『労働する子ども』明治期から昭和戦前期にかけての『貰い子殺し』と『児童労働』の問題構築過程に着目して」『立教大学教育学科研究年報』として公刊するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の達成度は、交付申請時に提出した「研究の目的」における以下の4つについて真摯に取り組んだものの、一部の目的については十分な達成を果たすことができなかった。その理由としては、今年度、勤務校の異動があり、研究環境の大幅な変更を余儀なくされたことがあげられる。新たな生活・研究環境に適応する過程で徐々に態勢を整えることができたが、当初の目的を達成するためにも引き続き積極的に研究に取り組む必要がある。 ①「子ども研究の理論・方法の検討」については、昨年度に引き続き、欧米の子ども社会研究(子ども社会学)の動向について文献購読を進めた。②「児童虐待を問題として語る社会の様相の解明」については、昭和6年から昭和8年かけての主要な新聞記事の収集を行い、分析と考察に取り組んでいる。しかし、当初の予定よりも記事収集が進んでおらず、この点については今後の課題である。③「児童虐待問題への社会事業団体や政府の介入に関する分析」については、社会事業団体の資料収集についてさらに取り組む必要がある。④「児童虐待問題における法制化の過程の分析」については、帝国議会議事録や委員会会議録、実際の法律や関係法令について整理を行ったが、内容に関する分析と考察に早急に取り組むことにしたい。これらの資料の収集と整理は研究環境の変化と限られた時間の中で効率的かつ継続的に進めることができるように努めたが、その取り組みは次年度においても引き続き実施していきたい。そしてその取り組みを研究成果として確実に実らせていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究方針方策については、平成28年度に勤務校の異動に伴う研究環境の変化によって十分位達成できなかった内容について改めて整理を行い、資料収集を継続しつつ、研究成果をまとめる作業を中心的に行う。それぞれ単独に進めてきた4つの課題について有機的な関連付けと統合を行い、研究学会での口頭発表並びに論文発表を行っていく。
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Causes of Carryover |
平成28年度に勤務校の異動があり、それに伴って研究環境に変更が生じた。そのため当初の予定よりも研究の進捗に遅れが生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の主要な調査である国立国会図書館での新聞、雑誌、調査報告、活動記録等の収集を継続的に行うとともに、日本各地に存在する資料の収集を行うために研究費を計画的に使用する。
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