2016 Fiscal Year Research-status Report
フリースクール運動における多様性の包摂の知識・技能の形成過程
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26780484
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
佐川 佳之 椙山女学園大学, 人間関係学部, 准教授 (50634341)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フリースクール / 連携 / 訪問支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フリースクールにおける知識と技能の形成過程の課題に関して、①教育機会確保法をめぐるフリースクールの動向の情報収集、②ローカルな場における支援・教育方法の構築過程の調査を中心に研究を進めた。 ①の内容については、同法に関わるフリースクールなどが主催するイベントに参加し、またその関係者の方にインタビューを行うなどして、最新の情報の収集に努めた。同時に同法に関する記事や雑誌論文に可能な限り目を通し、フリースクールをめぐる近年の動き、およびその言説内容の理解を試みた。 ②については、フリースクールと外部の支援・教育組織や個人との連携がフリースクールの支援・教育の方法の形成にどのような影響を及ぼすのかといった問いに関して、訪問支援を事例に調査を進めた。主な調査内容は、研究対象のフリースクールとその協力関係にある支援団体のスタッフに対するインタビュー調査、そしてそのフリースクールの実践に関連する行政の政策の動きに関する資料収集などである。そこから、フリースクールに関わる多様なアクターによる実践と言説の相互作用を通じて、支援方法が表出・維持されていく過程を具体的に把握することができた。現在、この調査で得られた資料を整理するとともに、正統的周辺参加論によるアプローチを検討しつつ、論文を執筆している。またこれ以外にも、地方のフリースクールの実践の特徴について、フリースクールと通信制高校との連携のあり方などに注目し、文献やインタビューを通じた調査を実施した。 教育機会確保法の成立によって、フリースクールにいっそう多様なアクターが関わることが予測される。本研究の課題に関しても、この状況の中で生じる人や制度の具体的な動向を注視しながら、フリースクールにおける一つ一つの実践を分析していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度は家庭の事情や他の研究課題への取り組みなどにより、当初の計画よりも大幅に研究進行が遅れ、具体的な分析ができなかった。また調査過程で、内容の一部について調査上の制約が生じ、さらに想定以上に理論的な検討に時間を要することになったことも理由にあげられる。 一方で、訪問支援とフリースクールに関する調査については、調査の進み具合は想定よりも遅れているが、調査対象者の協力もあり、有意義なインタビューを進めていくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまでの資料を整理し、また平成27年8月1日の東海教育社会学研究会における発表とそこで得られたコメントを踏まえた上で、訪問支援という方法に着目したフリースクールの実践について、正統的周辺参加論のアプローチから分析した論文をまとめたいと考えている。論文執筆と並行しながら、フリースクールと訪問支援に関するインタビュー、および参与観察も継続し、最新の動向の把握に努めたい。 また昨年度は地方におけるフリースクールの実践の実態についての調査が不十分であった。本年度も引き続き調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
上記の現在までの進捗状況においても述べたように、家庭の事情や他の研究課題への取り組みなどの理由、および調査上の制約の理由により、研究を進めることが難しかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、昨年度にできなかった地方におけるフリースクールの実践に関する調査、およびフリースクールにおける訪問支援に関する追加調査の費用として主に使用する。また論文執筆に必要な書籍の購入も予定している。
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