2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26780488
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松岡 亮二 早稲田大学, 留学センター, 講師(任期付) (80637299)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 社会階層 / 社会経済的地位 / 努力の不平等 / 計量分析 / 教育期待 / 大学進学期待 / マルチレベルモデル / 近隣効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
該当年度の業績は査読付き論文2本である。ただ,そのうち1本は2015年度内に掲載決定し発行が2016年度であったので,2015年度実績報告書ですでに記述している。よって,本報告では1編についてのみ言及する。 本論文は,平成23年度に内閣府が中学3年生とその保護者を対象とした調査(「親と子の生活意識に関する調査」)による個票データを二次分析し,教育における地域格差を明らかにした実証研究である。日本の義務教育は標準化された制度を特徴とするが,出身家庭の社会経済的地位による学習努力の格差――努力の不平等が指摘されてきた。たとえば,前年度の実績である論文(「Emerging inequality in effort」)は,小学校段階における親学歴による学習努力量の格差を実証的に明かにしている。 該当年度の実績である論文では,個人と近隣の2水準のマルチレベルモデルによって,中学3年生における努力格差を検討した。まず,高校受験の数か月前の時点においても,住んでいる地域によって学習時間に差があることを確認した。その上で,近隣の社会経済的地位が近隣の大学進学期待水準を介して学習時間と関連していることを実証的に示した。これは,個人の社会経済的地位だけではなく,地域の社会経済的地位によって努力格差が存在することを示唆している。換言すれば,本研究の知見は,標準化された義務教育制度に加えて高校受験という大きな学習圧力があっても,個人・地域の双方の水準で社会経済的地位に基づく学習努力格差があること――誰もが目標の高校に向かって全力で勉強しているわけではなく,努力投入量に階層性があることを明らかにしたといえる。これは日本社会における教育の不平等生成メカニズムの一部であると考えられる。
|