2014 Fiscal Year Research-status Report
社会科環境リテラシー育成カリキュラムの構築に関する研究
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26780491
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
宮崎 沙織 群馬大学, 教育学部, 准教授 (90591470)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会科教育 / 地理教育 / 環境教育 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
一年目となる平成26年度は、アメリカ合衆国の社会科の環境リテラシー育成におけるカリキュラムレベルの分析を中心に行った。本研究において仮説として提案している環境リテラシー導入のための三つの視点は、目標とする市民像とスキル目標、地理的知識目標である。 全米50州のうち、環境リテラシー育成カリキュラムを作成しているのは、約20州である。現在スタンダード改訂中の州も多い状況であるが、事例として4つの州のスタンダードに着目し、分析を行った。その結果として、仮説として提示している視点が、今後の社会科環境リテラシー育成カリキュラムの構築に向けて、ほぼ利用可能であることと、中でも地理的知識目標のあり方が重要であることが明らかとなった。アメリカ合衆国では、科目としての「地理」を必修としている州が少なく、社会科や歴史などに融合する形で地理的な内容が構成されている。そうした融合する形であるからこそ、環境リテラシー育成として地理的知識目標の存在意義も大きいことが明らかとなった。 それだけでなく、本研究では、全米の基準としての地理的知識目標に着目し、2010年に改訂された地理ナショナル・スタンダードの分析も行った。以上の研究成果については、現在論文として執筆中であり、次年度に公表予定である。 また、日本の新学習指導要領施行後に発行された社会科教科書の分析を行った。小学校中学校については、現在分析中で、高等学校については次年度実施したい。小中の教科書では、学習指導要領において「持続可能な社会の構築」について言及されたことも影響し、特に目標とする市民像としての充実がみられた。分析結果は、次年度に口頭発表および論文として公表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度(一年目)に目標としていたことは、達成しつつあるので、「おおむね順調に進展している」と判断した。しかしながら、課題として、次の二点が挙げられる。第一に、平成26年度(一年目)に予定していた国際学会への参加や現地調査を予定通り実施できなかったことである。第二に、小中の教科書分析を実施したものの、高等学校の教科書分析が実施できなかったことである。次年度に上記の点と研究成果の一部公表を積極的に進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目となる平成27年度は、アメリカ合衆国と日本の授業実践レベルの分析を中心に行い、前年に設定した枠組みに基づき、社会科環境リテラシー育成カリキュラムの構造化を図る。 アメリカ合衆国については、一年目の調査研究の結果から選定した事例州に基づき、授業実践の資料収集と分析を行う。その際には、単に授業観察や資料収集を行うだけでなく、担当教員やカリキュラム開発担当者から、それぞれの立場で環境リテラシーを導入するにあたり、直面した課題についてもインタビューする予定である。また、情報収集・交換のために国際学会(社会科教育・環境教育関連学会)等への参加も予定している。さらに、現地担当者との連絡や紹介等、ネットワークづくりの必要に応じて研究補助をつけたい。 日本については、一年目に実施できなかった高等学校の教科書分析も行うとともに、新学習指導要領施行後に開発された社会科環境学習授業及び単元を分析し、社会科への環境リテラシー導入に向けた実践的な課題を明確にする。新学習指導要領(社会科、地理歴史科、公民科)では、「持続可能な社会の構築」について言及がなされているので、これまでの環境保護・保全にかかわる学習だけでなく、現在日本で積極的に行われているESD(持続発展教育)としての環境学習にも注意を払い、対象を選定し、分析していく予定である。そして以上の研究活動より、平成27年度研究成果のまとめとして、社会科環境リテラシー育成カリキュラムの構造化をはかり、論文として発表を行う。なお、本研究の中間発表として国内外の学会および研究会(社会科教育・環境教育関連学会等)での口頭発表を計画している。
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Causes of Carryover |
平成26年度(一年目)に予定していた国際学会へ参加や二度予定していた現地調査を実施することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度(二年目)は、国内外における情報交流と研究成果の中間発表、そして現地調査の充実が求められる。よって、国内外の学会への参加や現地調査への旅費として使用する予定である。
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