2015 Fiscal Year Research-status Report
統計的推論力の発達を軸として小中連携の強化を図る統計の授業開発に関する実証的研究
Project/Area Number |
26780509
|
Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
川上 貴 西九州大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90709552)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 統計的推論力 / 小中連携 / モデリング / モデル / 現実的文脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,統計的推論力の発達という視点から小学校と中学校の校種間の連携を明確にし,深めるための理論・実践的方法・教材を開発することである。 今年度は,第一に,現実の世界と数学の世界を行き来するモデリングの視点から,現行の算数教科書や先行事例を分析し,統計的推論力の発達を促進する授業構成の枠組みを具体化した。その結果,児童・生徒が統計的なアイデアや概念を構成し,活用するための鍵となる学習活動として,モデルを創り上げる過程や他者(外界)からのモデルを共有し合う過程などを明らかにした。また,これらの過程は,データの世界と現実的文脈(real context)の世界との行き来を活性化させ得ることも明らかにした。こうした力動的な様相は,並行して行っているモデリングの学習指導に関する研究の知見も活かせる可能性を示唆する。 第二に,小学生から中学生への統計的推論の発達の道筋を「直観的な把握・考察」から「数理的な考察・処理」へのシフトであると大局的に捉えた上で,小学生及び中学生を対象とした統計的推論力に関する実態調査の問題を開発した。 第三に,前年度に開発した,中学校における統計授業を平成27年5月に実施した。また,前年度の2月に実施した,小学校における統計授業と合わせて,授業プロトコルを作成し,児童・生徒のワークシートの記述内容を分類した。 以上の研究成果の一部は,国際学会(第7回東アジア数学教育国際会議(EARCOME7),第17回数学的モデリング・応用に関する国際会議(ICTMA17)),国内学会(日本科学教育学会第39回年会等),学会誌等において発表した。また,Springerから発行される予定であるモデリング関係の洋書のチャプターに投稿した。さらに,研究者の情報を集積するデータベースである「Researchmap」や「Research Gate」を通じて,発表した一部の論文のオープンアクセス化を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主要な目的である「実践の分析」の計画事項にやや遅れがみられるものの,その他の計画事項については概ね順調に進んでいるからである。例えば、「統計的推論力の発達」を促進する授構成に関する仮設の設定」の計画事項については,過去の統計授業の再分析を更に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
第一に,小学生及び中学生の統計的推論力に関する実態調査を小・中学校で実施し,その結果を分析する。第二に,昨年度に実践した小学校・中学校における統計授業の量的分析及び質的分析を推進していく。第三に,実態調査や指導実践の分析も踏まえ,学年間・校種間における統計的推論を促進するための授業構成の枠組みを構築する。これらの成果を国際学会で発表したり,国内の学会誌等に投稿したりする予定である。
|
Causes of Carryover |
国際学会へ参加するための旅費が、当初見込んでいた経費よりも若干安く済んだため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
学会誌投稿の準備を行うための図書購入費に充てる。
|