2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the linguistic features and supporting methods of hearing impaired children with autism spectrum disorder
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26780513
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
大鹿 綾 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (10610917)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 聴覚障害児教育 / 自閉症スペクトラム / 発達障害 / 言語発達 / 支援方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は3名のASD児について取り上げた。なお、26~27年度に報告した児童(a児、b児)とは異なる事例である。ここでは特にろう学校5年生に在籍するc児について報告する。c児は高度~中等度難聴があり両耳補聴器装用、言語聴取に困難があるため手話等の視覚的手段が必要であるが、本人からの表出は主に音声に手話を併せたものが多い。WISC-4の言語理解では72と低下が見られるが、会話には積極的であり状況が伴えば短く簡単な文でコミュニケーションが成立する。PARSでは16点で強い自閉傾向が示された。人と関わることは好きであるが、関わり方が一方的になってしまったり、注意の焦点がずれたり、持続が難しい面もある。ASDを併せ有するc児が「語用・談話」にどのような言語的特徴があるのかを明らかにしつつ、有効な支援方法を検討した。方法としては状況絵を用いての一人語り、支援者との会話形式での語りを行った。結果、「語用・談話」の特徴として、部分的エピソードのみに注目していること、動作主に関する説明が不明確であること、事実のみを説明すること、人物の心的状況への言及が少ないこと、順を追って説明したり、情報の取捨選択が困難であることが挙げられた。年間を通した指導の中で明確な成績の向上は難しかったが、事実のみの羅列が占める割合は減少し、表情イラストを用いることで感情に関する発言が適切になっていく傾向が見られた。「語用・談話」の基となる語彙や文法にも弱さがあること、すでに小学部6年生であり、本人なりに積み重ねてきた手段があることなどから1年間の継続的介入の中では明確な成績向上にまで至ることはできなかったが、これまで周囲が感じてきた「伝わりにくさ」を分析できたことは大きな結果であった。今後、c児の言語力を伸ばしていくと同時に、周囲がc児の言語的特徴について共通理解を持ち、対応していくことが必要であると考える。
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Research Products
(9 results)