2014 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害児の生活リズム評価法と現状改善型指導法の開発
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26780522
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
平野 晋吾 白鴎大学, 教育学部, 講師 (90571654)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 生活リズム / 睡眠-覚醒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, 以下ASDと略す)児の特性にあった生活リズム評価法,及び生活リズム改善支援法の開発を行うことである。目的を達成するために「①保護者への意識調査」「②評価法の開発」「③指導方法の開発」の3点を相互に関連させながら研究を推進している。 初年度は研究環境の改善などの準備を主に行いながら,①生活リズムに関する保護者の意識調査を行うための質問紙作成に着手し,保護者への聞き取りを通して,質問項目の選定を開始した。また,②特別支援学級に在籍するASDのある小学生男児2名と大学生を対象とした予備調査を行った。生活リズムはアクチグラフ法と睡眠日誌法を用いて記録を行い,自己相関係数を用いて個人の生活リズムの周期や規則性を算出し,生活イベント等との関連を分析した。そして,③得られたデータを用いて,視覚的支援教材の開発に着手した。教材の検討を行うために前述のASD児の内1名に対して,PowerPointのアニメーション機能等を利用した教材を作成した。本児は知的障害がなく,言語性知能が優位であったことから,アクチグラフ及び睡眠日誌データを用いた視覚支援教材に詳細な説明文(文字と口頭による教示)を付加し,生活リズム改善指導を行った。指導の効果については継続した観察を続けている。 ASD児に対する事例研究の結果,障害特性等に合わせた支援教材やアクチグラフによって,自らの活動を客観的に観察可能な状態になることで,少なくとも一時的な生活リズムの改善が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,地域の小学校・中学校・幼稚園各1校及び地域外の小学校1校の計4校と実質的な連携を組みながらASD児の支援を開始したとともに,親の会等の研修を通じて連携体制の構築を図りながら研究フィールドを拡げることができた。 また【研究実績の概要】示した通り,目的を達成するために「①保護者への意識調査」「②評価法の開発」「③指導方法の開発」の3点を相互に関連させながら研究を推進したが,②③に関しては,ASDのある小学生男児の事例研究を通して,計画以上の成果を得ることができた。①の調査表作成に関しては,保護者の聞き取りなどを行う中で,質問内容についての精査を要すと判断したため,作成および予備調査は次年度に持ち越された。 加えて,生活リズムの客観的指標の一つであるアクチグラフ法について行った関連文献のレビューは,大学生・大学院生向けの教科書の一節への掲載を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,「①保護者への意識調査」「②評価法の開発」「③指導法の開発」の3点を相互に関連させながら研究を進める。 ①質問紙を作成し,ASD児の保護者に対する生活リズムに関する意識調査(介入の前後)を行う。②インフォームドコンセントを経て保護者了解を得たASD児に対して睡眠ポリグラフ評価及び生活リズム評価を行う。また,大学生を対象とした予備研究も継続して行う。睡眠ポリグラフ法は環境への不慣れや過敏等によって実施不可能な場合があるため,携帯移動可能な生体アンプを使用し,事例研究法の手法も意識した多角的なアセスメントを導入する。アセスメントには,WISC-IV,DN-CAS,新版K式発達検査2001,ASSQ-Rなどを使用する。③視覚支援教材及びSSTを利用した生活リズム改善指導を行い,介入前後の概日リズムの変化をアクチグラムと睡眠日誌等により比較し,寝つきやすさ等を睡眠ポリグラフにより比較する研究により指導の効果を測定する。指導の効果は,適宜保護者等へフィードバックを行う。 研究フィールドの確保や,保護者や対象児への丁寧な説明によって理解を得ることが必須の研究であるため,参加者数確保の困難があり得る。そのため,データ集積は平成28年度まで2年間で行う。
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Causes of Carryover |
携帯型脳波計(学内予算による購入)の運用が次年度以降となったため,その消耗品費等の購入費として残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脳波計測を含む研究推進のための消耗品費,情報収集のための学会参加費(日本LD学会,日本生理心理学会),データ収集のための旅費(高知県4日間),及び論文投稿費として使用する予定である。加えて,脳波計測等の研究補助員への人件費として使用する予定である。
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