2015 Fiscal Year Research-status Report
2種の超分子システムの融合による、新規人工光合成モデルの構築
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26790002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石田 洋平 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00726713)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 光化学 / ナノ材料 / 粘土鉱物 / ポルフィリン / エネルギー移動 / 分子カプセル / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの検討により、粘土ナノシート上に共吸着した二種の色素間において、高効率なエネルギー移動反応が進行する事を報告している。本研究では、人工光合成の初期モデルとして、エネルギードナー、エネルギーアクセプター(兼電子ドナー)、電子アクセプターを粘土上に共存させ、エネルギー移動反応と、電子移動反応が段階的に進行する系の構築を目指した。エネルギードナーとして 2-acetylanthracene(AA)を選択し、これをカチオン性カプセル型分子(OAm8+)に内包させた(AA@OAm216+)。エネルギーアクセプター兼電子ドナーとしてtetrakis(1-methylpyridinium-4-yl)porphyrinatozinc(ZnTMPyP4+)を、電子アクセプターとして 1,1'-bis(2,4-dinitrophenyl)-4,4'-bipyridinium(DNPV2+)を選択した。これらの溶液を粘土分散液に撹拌しながら加え、複合化した。 AA@OAm216+-ZnTMPyP4+∩Clayの蛍光測定において、エネルギードナーであるAA@OAm216+の蛍光は減少し、代わりに ZnTMPyP4+の 蛍光強度が増強した。これはAA@OAm216+からZnTMPyP4+へのエネルギー移動反応が進行したことを示している。蛍光スペクトルの解析より、エネルギー移動効率および損失効率は それぞれ67%、5%であった。定常蛍光、時間分解蛍光の詳細な解析により、目的に掲げたエネルギー移動反応と、それに続く電子移動反応が進行していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究で取り上げているナノシート/分子カプセル複合系を用いて人工光合成の初期モデルとして、エネルギードナー、エネルギーアクセプター(兼電子ドナー)、電子アクセプターを粘土上に共存させ、エネルギー移動反応と、電子移動反応が段階的に進行する系の構築を行った。研究課題の目的である新しい人工光合成モデルの構築には基礎的ながらも一部成功し、本課題の目標をおおむね順調に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で、ナノシート表面に固定された光捕集色素、光エネルギーアクセプターおよび電子アクセプターの協奏的な光化学反応が可能であることが示され、新規な人工光合成モデルと呼べるものが提案できた。今後は、より実際の光合成系や優れた物質変換系への展開を目指したい。具体的には、いかに示すような超分子系を設計することで、“電子移動後の精製物を直接単離できる”、いわば植物が行っているような系を目指したい。電子ドナーを溶液中に独立した状態で存在させることにより(つまりナノシート表面に配置しない)、電子移動後にはその電子ドナー分子の価数を変化させ、安定な電荷分離状態を形成可能であると期待している。超寿命に安定な電荷分離状態の達成は現在の光化学研究全般における最大の課題であり、本研究課題で行ったような次世代の超分子システムを用いて克服することができると考えている。
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Causes of Carryover |
最終年度である2016年度に分光装置を購入するため、2015年度の使用を一部制限した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成のための消耗品、分光装置の購入に充てる。
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