2015 Fiscal Year Research-status Report
一体型CNTs/グラフェン3次元ハイブリッド体の酵素電極反応系への展開
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26790011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小森 喜久夫 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60431813)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ炭素材料 / カーボンナノチューブ / グラフェン / ハイブリッドフィルム / バイオセンシング / 酵素電極 / 直接電子移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グラフェン表面からカーボンナノチューブ(CNTs)を成長させた一体型3次元ハイブリッド膜を合成し、基板表面での単位面積当たりの酵素固定化量を増大させることにより、高感度かつ広いダイナミックレンジを持つ電気化学酵素センサの開発を目指す。前年度では、酵素ペルオキシダーゼモデルのヘムペプチド(HP)を用いて検討した。次年度では、酵素西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を3次元ハイブリッド膜表面に固定化し、基質である過酸化水素(H2O2)に対する電流応答を調べた。HPと比べてHRPは、複雑な高次構造から、高い触媒活性を持ち、また高い選択性も持つ利点がある。界面活性剤sodium dodecyl sulfate(SDS)を用いて3次元ハイブリッド膜にHRPを固定化し、サイクリックボルタンメトリーを行ったところ、HRPの反応中心であるヘム鉄の2価/3価の可逆な酸化還元電流応答を得ることができた。このときの酸化還元電流応答から、3次元ハイブリッド膜に固定化された電気化学的に活性なHRP量を求めたところ、2次元のグラフェン膜と比べて約2倍増大させることが可能であった。その結果、検出物質のH2O2に対する電流応答も約2倍向上させることに成功した。また、このときの電流応答から、3次元ハイブリッド膜表面でのHRPとH2O2との間の反応速度を調べた。その結果、HPとH2O2との間のものに比べて、約3倍向上することが明らかになった。以上より、酵素を3次元ハイブリッド膜に固定化しても、高感度電気化学バイオセンシングに利用できるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要で述べた内容について、現在、論文投稿中である。また、3年目の課題(今後の研究の推進方策等を参照)にも取り組み始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目では、酵素ペルオキシダーゼの活性中心であるヘミンを用いる。ヘミンはポリペプチドを持たないため、ペルオキシダーゼと比べて、触媒活性は著しく小さくなる。しかしながら、分子量は約2桁小さくなるため、ヘミンを3次元ハイブリッド膜に高密度で固定化できれば、3次元ハイブリッド膜全体での活性を高めることができるかもしれない。また、ヘミンはペルオキシダーゼと比べて極めて安定であるため、高安定性の高感度電気化学バイオセンシングへの応用可能性を明確にする。 この他に、3次元ハイブリッド膜でのレドックス種との電子移動反応の促進化を検討する。一般的に、sp2炭素の平面部分は、エッジ領域と比べて、化学種との電子移動反応が遅いことで知られる。そこで、3次元ハイブリッド膜に意図的にエッジ領域を導入し、レドックス種との電子移動反応速度の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
2015年度中に、学内での配置換えに伴う研究室の移動作業が発生したため(東京大学駒場第2キャンパスから東京大学本郷キャンパスへ移動)、研究自体は概ね順調に進んでいるものの、実験のペースが落ちたことにより、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな実験作業場で実験遂行上必要になる物品類の購入および2016年度開催予定の国際会議の参加費等に使用する予定である。
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