2014 Fiscal Year Research-status Report
カーボンナノチューブ電極を用いた半透明有機薄膜太陽電池の開発
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26790021
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤井 俊治郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (80586347)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 透明電極 / 有機薄膜太陽電池 / 半透明太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、単層カーボンナノチューブ(CNT)を有機薄膜太陽電池(OPV)の透明電極として用いることにより、半透明なOPVを実現することを目的とする。平成26年度は、単層CNTを電極に用いる予備実験として、金属/酸化物多層膜を半透明電極として採用し、デバイス構造と作製条件の検討を行った。活性層材料には、p型半導体として狭バンドギャップポリマーのPTB7をn型半導体としてC70フラーレン誘導体(PC71BM)を用いた。その混合溶液をITO電極付ガラス基板に塗布することにより、バルクヘテロ構造の逆型OPVを作製した。デバイス構造は、Glass/ITO/バッファー層/活性層(PTB7:PC71BM)/酸化モリブデン/金属(銀または金)/酸化モリブデンである。酸化モリブデンを金属上にキャッピング層として覆うことにより、透過率が増加することが分かった。さらに、銀よりも金電極の方が、可視領域において透過率が高いことを明らかにした。金/酸化モリブデンを用いた場合、入射光550 nmにおける太陽電池の透過率は40%以上を示し、半透明なOPVの作製に成功した。電流密度-電圧特性の測定を大気中で行ったところ、両面からの発電が確認され、酸化モリブデン/金電極側およびITO電極側から光照射した場合の発電効率がそれぞれ2.3%、2.8%であった。さらに、反射ミラーを酸化モリブデン/金電極側に置きITO側から光照射した場合、発電効率が30%増加したことから、半透明OPVの透過光が再利用可能であることが分かった。来年度は、金属/酸化物多層膜の代わりに単層CNT電極を用いた半透明なOPV作製を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、金属/酸化物積層膜を半透明な上部電極として、高分子ポリマーとフラーレン誘導体を用いた有機薄膜太陽電池のデバイス構造および作製条件の検討を十分行うことができた。銀/酸化モリブデンよりも金/酸化モリブデン電極の方が、可視領域において透過率が高いなど、新たな知見も得られた。計画通り、半透明の有機薄膜太陽電池の作製に成功しており、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に確立した半透明逆型OPVの作製技術を基盤として、次年度は、まず上部電極に単層CNT薄膜を用いた新規構造の半透明OPVの作製を行う。具体的には、活性層(PTB7:PC71BM)の上に、バッファー層と単層CNT薄膜を塗布製膜する。直接塗布でうまくいかない場合は、別の基板上に作製した単層CNT薄膜を転写または貼り合わせる方法などを用いる。上部電極に単層CNT導電膜を用いた太陽電池の透過率や電流電圧特性などを測定し、半透明OPVとしての性能を評価する。次に、複数の半透明OPVを用いて積層(タンデム)構造を作製し、発電効率の向上を試みる。それと並行して、ポリエチレンテレフタレートなどフレキシブル基板上で同構造の作製を行う。さらに、下部電極のITOを単層CNT薄膜または導電性高分子薄膜に置き換えたOPVの作製も試みる。また、経時変化測定を行い、大気中で半透明太陽電池の寿命特性を測定し、劣化に関する知見を得る。以上の実験から得られた最適条件を基に、高効率で高寿命の新規半透明OPV作製を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は、消耗品費(主に試薬と有機材料)が当初の予定よりも多くかかった。一方で、国内学会で4回の成果発表を行ったが国際学会で発表を行わなかったため、結果として次年度に繰り越す予算が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
単層CNT薄膜を電極に用いた半透明な有機薄膜太陽電池を作製するための消耗品、国内・国際学会旅費および論文投稿料などに使用する。
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Research Products
(7 results)