2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ空間内物質輸送現象の解明と一分子インピーダンス計測
Project/Area Number |
26790025
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
横田 一道 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50633179)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 1分子計測 / マイクロ・ナノデバイス / マイクロ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、制限ナノ空間による流体中の物質輸送現象を分子レベルで解明し、この知見をもとにイオン電流変化とインピーダンスの同時測定による一分子識別を実現することである。 具体的には、ナノポアを介したイオン電流の時間変化からナノポアを通過する物質の体積を測定し、ナノポアに組み込まれたナノギャップ電極間の交流インピーダンス(インピーダンスと位相角)測定から物質通過中の抵抗・容量測定を行う。これらの同時測定により、制限ナノ空間内の通過物質の物性と物質輸送のダイナミクスを一分子レベルで解明する。更に、体積の等しい一分子であっても、その材料物性(金属・絶縁体)によって識別可能であることを実証する。 上記課題の達成のため、本年度はガラス基板上でのナノ電極作製とインピーダンス計測装置の構築を行った。ナノギャップ電極の作製基板をシリコン基板上からガラス基板に代えることにより、シリコン基板上ではnF程度あった電極の寄生容量をfF以下にまで低減することができた。また、自作の高感度電流アンプを用いた計測系の開発により、TΩを超えるハイインピーダンス領域の計測も可能となり、一分子計測に向けた基盤技術を構築することができた。 一方、上記のようなナノデバイスにおいては、測定結果のみで絶対値を高い確度で議論することは難しい課題である。そこで、有限要素法による電界・流体のシミュレーションと比較する事により、開発したデバイスと測定系の定量的な評価を現在行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初研究計画に沿ってガラス基板上でのナノギャップ電極作製とインピーダンス計測系の構築を行った。作製したナノギャップ電極では寄生容量をfF以下に抑えることに成功しており、極めて小さな容量変化を計測する必要のある一粒子・一分子の計測のための基盤となるデバイスの作製が達成できた。 また計測系の構築については、当初LCRメーターの前段に自作の増幅器を組み込むことにより、GΩ以上の高インピーダンス領域の計測を計画していたが、自作の増幅器で低周波数・高インピーダンス領域を測定し、LCRメーターで高周波数・低インピーダンス領域を測定することで、より広範囲のインピーダンスと周波数の帯域について評価することができた。 また前著のように、当初計画の実験に加えて有限要素法を用いた計算実験も行った。これは、ボトルネックとなる局所領域の情報が強く影響する直流計測に対して、本研究で取り組む交流計測では、計測系全体のマクロなデバイスの情報も測定結果に影響するという知見が得られたためである。そこで、ナノ電極はもとより、一粒子・一分子を導入するマイクロ流路等の様々な構成部品を含めたシミュレーションを行い、開発したデバイスに対する定量的な評価を現在行っている。 本年度は、上記の通り、一粒子・一分子計測に向けた基盤技術の開発に成功し、その定量的な評価にまで進むことができたことから、当初計画のお通りおおむね順調に進展しているものと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、有限要素法による電界・流体のシミュレーション結果も合わせた実験を行う。具体的にはナノギャップ電極に加えてマイクロ流路も組み込んだうえでのデバイス最適化(測定対象を効率的に輸送する流路形状や、その駆動力となる電界分布を考慮した電極配置)を行い、一粒子・一分子計測に向けたデバイス作製を行う。 開発したデバイスを用いてポリスチレン粒子と金粒子の測定を行い、イオン電流変化とインピーダンスの同時測定による物質識別の原理実証を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究により、本課題の達成にはナノ電極だけでなく、マイクロ流路などの他のマイクロ・ナノコンポーネントも含めた設計の最適化が重要であることが分かった。そのため物品費の一部を、次年度のマイクロ流路の設計・試作に用いる事とした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロ流路の鋳型の設計・試作と、流路を形成する母材の購入費に充てる。
|