2014 Fiscal Year Research-status Report
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26790032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻本 学 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究員SPD (20725890)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超伝導 / 銅酸化物高温超伝導体 / テラヘルツ / 連続光源 / 温度分布イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
テラヘルツ帯の電磁波を用いたテラヘルツ技術は、医療診断、セキュリティー検査、タンパク質の構造解析、高速無線通信など、幅広い分野への応用が期待されている。このテラヘルツ波の連続光源の候補として、高温超伝導体のナノ構造を利用した超伝導テラヘルツ光源が最近注目されている。この光源は超伝導の特徴である巨視的コヒーレンスを活かした独創的な動作原理に基づいており、他の光源では真似できない優れた特性を示すことが期待されている。本研究の目的は、実用化に向けた超伝導テラヘルツ光源の高出力化である。本年度は、具体的に温度分布イメージング装置の構築、自己発熱特性の評価、および排熱構造を最適化した高出力テラヘルツ光源の開発に取り組んだ。 研究代表者は極低温環境でも有効な温度イメージング装置を構築し、微小サイズの光源表面における特徴的な温度分布の可視化に成功した。そして温度分布とテラヘルツ発振強度の比較ができる特殊な構造を有した光源を用いて実験を行い、過剰な温度上昇を抑制することでテラヘルツ発振の高出力化を実証することができた。得られた実験結果を数値シミュレーション解析し、高出力テラヘルツ光源の実現につながる効率的な冷却方法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定より早く温度分布イメージング装置の構築が完了し、2014年内に実験結果をまとめた論文をアメリカ物理学会Physical Review Applied誌に掲載することができた。実験を進めながら国内学会で2件の口頭発表(うち1件は招待講演)と1件のポスター発表を行い、このうちポスター発表ではポスター最優秀賞を受賞することができた。成果の一部は日刊工業新聞の記事や京都大学ホームページで紹介され広く周知することができた。以上の理由で本年度の達成度は当初の計画以上であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題解決に向けた今後の推進方策として以下の二つを提案したい。すなわち、①温度分布イメージング装置の改良と温度分布・出力の関係についての定量的解析、②光源の高出力化をめざした素子構造の最適化、である。これらを実施するために、まず初年度に得られた知見をもとに新しい素子を設計することが始め、数値シミュレーション解析などを使ったパラメータ制御に取り組みたいと考えている。実験で得られた結果を学会発表や学術雑誌における論文掲載を通じて公表し、国内外の研究者との議論と通じて研究課題解決につながる糸口がつかめるよう努力したい。
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Causes of Carryover |
研究課題を遂行する上で実際に使用した物品費、旅費、その他の合計は当該年度の支払請求額より少なくて十分であったため、発生した差額を次年度使用額として使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費あるいは旅費として翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する。
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Remarks |
(1) 高温超伝導体を用いた新しいテラヘルツ光源における温度分布の可視化と制御に成功 -小型コヒーレントテラヘルツ光源の実現につながる重要な手がかり- (京都大学ホームページ 研究成果)
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