2015 Fiscal Year Research-status Report
3次元フォトニック結晶による高Q値光ナノ共振器の実現に関する研究
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26790034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石崎 賢司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40638524)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3次元的な光ナノ構造である3次元フォトニック結晶を活用して、立体的に完全に光の状態を制御し、従来を上回る高い光蓄積性能(高Q値)を有する光ナノ共振器を探索することを目指している。これまでに、研究代表者らが開発してきた、光の波長の領域で動作する3次元構造の、積層融着による形成法および立体光導波制御技術を核として、本技術のさらなる発展および、ナノ共振器-導波路の結合構造の解析・設計により外部からの光学特性評価を可能とすることで、実験と理論の比較分析(作製誤差等の影響調査)へと展開し、3次元結晶における極限的な性能の評価・実現していくことを目指している。 第2年次である平成27年度は、昨年度に得られた、16層構造におけるQ値~4900を上回ることが期待されるより多層の構造内部へのナノ共振器実現にむけて、その核となる、新規の多層構造形成技術の構築に注力した。昨年度、初めて32層構造の初期開発を行ったが、31回という多数回の位置合わせ融着積層工程を必要とすることから、その開発に時間がかかることが課題であった。そこで、大面積ウエハに多数のフォトニック結晶構造を用意し、これを一括融着積層した後に分割するという、新規技術の開発を推進した。ウエハの反りの影響の解析とウエハ構造の選定、試料の保持方法の検討、さらに光学的なマーク検出による位置誤差精度向上のための光学系の分析・構築を行い、最終的に32層を構成するために必要となる16層分をまとめた~30mmの基板を、一括融着し、これらを分割しながら積層していくことに成功した。今後、本手法により、32層程度の構造中へのナノ共振器の導入とその評価へと発展させる。さらに、これらの評価の基礎として、立体的な導波路同士や、導波路と外部との結合特性の解析を行い、具体的な結合効率を明らかにし、より高効率に結合させるための指針も見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、より多層の構造を実現し、ナノ共振器を導入していくための核となる、大面融着による多層積層技術の開発を推進した。本技術開発は、当初の計画段階では、主たる項目ではなかったが、研究全体の効率的な推進を考慮して研究計画を再構築し、新たな基盤技術として注力して開発した。これにより、当初目的に向けて、加速的に研究を行うことが可能になっており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、これまでに構築してきた作製技術を基盤として、ナノ共振器-導波路結合構造を32層構造中へと形成し、この特性を実験的に評価していく。この結果を、解析と比較し、得られたQ値を決定する要因(理想構造からのずれや、意図しない吸収など)について議論する。この結果をもとに、各種損失要因を定量化し、さらなる実験特性の向上を図り、これまでに未踏であった3次元結晶の性能の実現へと展開することを目指す。
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Causes of Carryover |
本研究の要となる、位置合わせ積層技術について詳細な検討を行ったところ、特に、新たに開発を推進した大面積ウエハの積層において、積層位置誤差を抑制するために、試料の平行度調整等の機構が極めて重要であることが判明した。年度内に、この点を改善すべく装置メンテナンスを行ったが、この結果をもととした分析の結果、試料の保持方法やウエハの層構造などに起因した、積層誤差を生じている可能性が判明した。これらの改善のための分析および設計を推進しているところであり、効率よく研究経費を活用するために、次年度に使用する計画とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の未使用額を、物品費として、次年度の計画分と合わせて活用し、特に、大面積積層プロセスのためのシステムならびに器具の向上を図る。また、判明したウエハの反りなどの問題に対応すべく、新たなウエハの導入にも用いる。これにより、3次元フォトニック結晶構造のより効率的な作製の基板技術の構築を推進する計画である。
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Research Products
(8 results)