2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26790057
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 哲 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (70425099)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | スピン / 正孔 / 重ね合わせ / 量子井戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は正孔スピンの生成と緩和過程の基礎的知見を得るために,昨年度に引き続き,共鳴励起時間分解測定を行い,得られた結果を元にスピン間相互作用を利用したスピン操作の検討を行った. 第1に,直線偏光励起による偏光時間分解PL測定を行い,スピン重ねあわせ状態の励起エネルギー及び励起パワー密度による変化を議論した.井戸幅8 nmのMQWを直線偏光励起した場合の18 Kにおける偏光度の時間変化を測定したところ,励起エネルギーに対して緩和時間は30 ps程度であったが,発光エネルギー(1.565 eV)から高エネルギー側に離れるにしたがって偏光度の初期値(ピーク値)は徐々に減少し,ゼロに近づくことが観測された.励起パワー密度を増加させたところ,緩和時間は減少した.これは励起キャリア密度が増加することにより,電子・正孔間に働く交換相互作用が増加しスピン緩和を促進させたと考えられる.また,井戸幅の増加に対してスピン緩和時間が減少することが分かった.これは円偏光励起の場合と逆の傾向である.井戸幅の増加によりLHとHH準位のエネルギー分裂量が減少し,バンド混合が増加したことにより,スピン緩和が促進されたものと考えられる. 第2に,ポンププローブ法測定系により,直線偏光におけるスピン偏極とその緩和時間の測定を行った. PL測定と対応したMQW試料を用いて,スピン緩和時間の比較・評価を行った.励起パワー密度の増加により緩和時間が減少する点,量子閉じ込め効果の増加により緩和時間が増加する点において,PL測定と同様の傾向が観測された.これらにより,ポンププローブ測定によってもスピン重ねあわせの緩和時間の評価が可能であることが確認された.また,構築したポンププローブ測定系はスピン間相互作用による歳差運動の変化を測定する為に必要な時間分解能を有することが確認された.
|
Research Products
(3 results)