2016 Fiscal Year Research-status Report
大気圧下プラズマCVD法によるアモルファス炭素異方性制御技術の開発
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26790065
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Research Institution | Kushiro National College of Technology |
Principal Investigator |
齋藤 誠紀 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 准教授 (40725024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、大気雰囲気中でメタンプラズマジェットをシリコン基板に照射しアモルファス炭素膜を製膜する実験を行った。ガス流量・マイクロ波電力・基板設置高さを変化させ、発生するアモルファス炭素の構造を分析した。煤状の炭素生成物が堆積していることは確認できたものの、炭素膜が形成されている兆候は確認できなかった。放射温度計を用いて照射中の試料温度を確認したところ、基板設置高さがノズルに近い場合、最大で1000℃を越える温度になっていることを確認した。チャンバーを設置し、ガス圧力を制御する実験を試みたが、ポンプの排気速度不足のため、十分な排気を行えなかった。そのため、大気雰囲気中での結果と大きな差は得られなかった。排気速度のより高い早い真空ポンプを導入したが、6か月間の長期出張のため、当該年度中に十分な実験を実施するには至らなかった。来年度は購入した新しい真空ポンプを活用して実験を進める。 長期出張の間、実験を行えなかったため、理論計算を中心に研究を進めた。分子動力学法を用いた炭素成膜計算コードを準備し、成膜条件を調査した。特に、アモルファス炭素に含有される水素原子の振る舞いについて詳細に分析を行い、メタンプラズマに含まれる水素が入射した場合、水素原子のまま反射される確率が高く、CHなどの炭化水素として放出する確率は低いことが分かった。また、昨年度新たに発見した、タングステンへのヘリウムプラズマジェット照射時における綿毛構造の生成に関しても理論研究を進め、綿毛構造の前駆体と考えられるバブル構造が生じると、周辺のタングステン原子に比べ、バブル内ヘリウム原子が効果的にプラズマからエネルギーを得て加熱されることを突き止めた。ヘリウムバブルが選択的に加熱されることで、周辺のタングステンが展延し、繊維状構造の形成に至ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予想していた質の高いアモルファス炭素成膜を実現できておらず、本研究課題の肝であるC-C炭素異方性の測定に至っていない。また、ガス圧力を制御するためチャンバーを導入したが、今のところ排気が不十分であったため成果は得られなかった。来年度は新たに導入した真空ポンプを利用して、質の高いアモルファス炭素成膜を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
C-C結合異方性を測定する前段階として、まず、膜質の良いアモルファス炭素を生成する必要がある。大気雰囲気中では、膜質の良いアモルファス炭素を生成するには至っていない。チャンバーに接続した真空ポンプの排気速度を上げ窒素ガスを導入することで酸素を遮断するとともに、ガス圧力が低い条件でも実験を行い、炭素膜の向上を目指す。また、バイアス電圧の工夫により膜質が改善するとの研究例もある。バイアス電圧を工夫し、実験を行うとともに、分子動力学法を用いた計算も行い検証する。さらに、ヘリウムガスを混合することで膜質が改善するという先行研究もある。ヘリウムとメタンの混合ガスを用いた成膜実験も行う予定である。 また、昨年度から開始した、タングステンへのヘリウムプラズマ照射実験も並行して進める。チャンバー内の大気を排気し窒素ガスを導入する。酸素濃度を変化させたときの綿毛構造酸化率の変化を調べ、酸化率と綿毛構造の関係を調査する。この綿毛構造は、適切な酸化率の場合、光触媒として効果的に働くとの報告もある。そこで、綿毛構造の酸化率を制御し、光触媒として利用する可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は6ヶ月間の出張業務が生じたため、本研究課題に割ける時間が少なかった。そのため、次年度研究課題遂行時に備え、72111円の予算を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
チャンバー内に窒素ガスを導入するためのガスと配管整備、フローメーターの設置に約12万円、メタン・ヘリウム・窒素ガスおよびシリコン・タングステン基板を含めた消耗品等に約20万円、旅費等に25万円程度利用する。
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Research Products
(5 results)