2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26790073
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
吉田 芙美子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究職 (30450422)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 透過型回折格子 / 高屈折率材料薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,従来の回折格子とレンズ,非線形結晶からなるテラヘルツ(THz)波発生のための光源デバイスに換えて,回折格子と非線形結晶が一体となった透過型回折格子をもつ新デバイスの開発および作製である.回折効率を上げるため,高い屈折率の薄膜を非線形結晶上に作製し,そこに回折格子を作る方法を考案し,実際に開発を実行した. 平成26年度は,申請者が新たに開発した酸化チタンの成膜技術を利用して,非線形光学結晶上に薄膜を作製し,屈折率,膜厚,吸収係数等,光学定数の物性評価に加えて,膜の耐力試験やSEM 観察を実施した.その結果,薄膜作製途中の加熱処理の段階で,金属チタンが非線形結晶内を拡散し,そのために酸化チタン膜の屈折率が下がる現象が新たに見つかった.この問題を回避するため,非線形結晶と酸化チタン膜の間にバッファー層として 石英膜を挟む解決策を取り,その結果,拡散を抑えることができた. バッファー層の導入により,石英膜と酸化チタン膜で構成される新たな多層膜構造についてデバイス設計が必要となったため,回折効率を指標に膜厚と回折格子の形状を新たに設計し直して,それに基づいて実際のデバイスを作製した.さらに,酸化アルミと酸化タンタルの多層膜を使った新たなデバイス構造も考案された.前述した高屈折率材料を使った膜構造と合わせて,これら2種類の多層膜構造を作製した後,膜上に回折格子を作って新デバイスを完成させた. 出来上がった回折格子を伴うデバイスについて,回折効率を評価した.その結果,酸化チタン膜を使ったものではおよそ33%,酸化タンタルを使用したものでは70%の高い効率が得られた.さらに,両者にポンプ光を照射して,THz波の発生試験を実施した結果, THz波の発生に成功した.これは,新デバイスを使った方法でTHz波を発生した初めての事例である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,平成26年度は,酸化チタン膜を非線形結晶上に作製し,膜の特性評価を行う予定であったが,これらの計画が予定より早く進み,実際に新デバイスを作製する段階にまで達したので当初より早く計画が進行しているといえる.デバイス作製に進んだだけでなく,デバイスの評価やテラヘルツ波の発生試験も順調に行われ,新デバイスを使ったテラヘルツ波の発生という大きな目標をクリアすることができた.また,新たな膜構造をもつ新デバイスも考案され,このデバイスの回折効率は70%と非常に高い値が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進策は,テラヘルツ波の高強度化を目指して,新デバイスを大型化することである.現在,回折格子製作時のエッチングにかかる時間的制約から,回折格子エリアが10*10mm程度に制限されているが,高感度レジストを利用して時間短縮を図ることにより,大幅に格子エリアが拡大される見込みがある.
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Causes of Carryover |
予定していた購入品の価格を,実際には低く抑えることができたため,残額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて新たな回折格子の製作費として使用する.
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