2016 Fiscal Year Research-status Report
アーサー跡公式の幾何サイドの研究と明示的跡公式への応用
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26800006
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
若槻 聡 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (10432121)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 代数学 / 整数論 / 跡公式 / 保型形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
保型形式とはリー群の離散商上に定義される固有関数のことであり、整数論において中心的な役割を担う。そして、跡公式は保型形式の研究において最も重要な理論の一つである。本研究では一般的な代数群に対して定式化されているアーサー跡公式について研究を行い、さらにその研究を多変数保型形式の性質を調べることに応用することが目的であった。より正確に書くと、連結簡約代数群に関するアーサー跡公式の幾何サイドと概均質ゼータ関数を関係付けることと、その関係付けと概均質ゼータ関数の性質を用いることで多変数保型形式の空間の明示的次元公式やヘッケ作用素の明示的跡公式を研究することが本研究の具体的な目的である。今年度の大きな成果として、アーサー跡公式と概均質ゼータ関数の関連付けについて二つの研究成果を得ることができた。一つは階数2の例外型単純代数群G_2の跡公式の幾何サイドと概均質ゼータ関数を関係付けることに成功した。特に興味深いこととして、サイドの準正則ユニポテント寄与は、概均質ゼータ関数の一種であり数論的にも重要である2元3次形式の空間の新谷ゼータ関数と関連付けられる。もう一つは階数3の連結簡約代数群のうちで最も重要であるGL(4)の幾何サイドとゼータ関数の関連付けに成功した。この群については準正則ユニポテント寄与のみが未解決であった。今回、既知の方法とは異なる手法で解決に成功した。そのため、この方法が一般的な定式化に向けての重要な例となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に明示的次元公式に関する目的をほぼ達成することが出来たので、今年度はもう一つの大きな目的である跡公式の幾何サイドに重点をおいて研究を行った。そして、目標である跡公式の幾何サイドと概均質ゼータ関数を関連付けることを、いくつかの主要な場合に達成することができた。この成果とその研究過程によって最終的な解決に向けての具体的な問題点が明らかになった。そのため、今後の研究への重要なステップを踏むことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、本研究におけるいくつかの具体的な目標が既に達成されているが、今後は最も重要な目的である跡公式の幾何サイドの研究に力を注ぎたい。特に、今年度の成果を基にして、一般線形群に関する跡公式の幾何サイドと概均質ゼータ関数の関係を明らかにすることを研究する。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも海外出張旅費の負担が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に海外の共同研究者が2ヶ月間金沢大学に滞在するため、その滞在費として使用する予定である。
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