2014 Fiscal Year Research-status Report
非アルキメデス的幾何の研究と代数多様体の算術への応用
Project/Area Number |
26800012
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山木 壱彦 京都大学, 国際高等教育院, 准教授 (80402973)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 幾何的ボゴモロフ予想 / 非アルキメデス的幾何 / トロピカル幾何 / 高さ / 線形系 / 国際研究者交流(フランス、イタリア) |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的の一つに、幾何的ボゴモロフ予想ついての考察が挙げられている。この予想は、関数体上定義されたアーベル多様体においてその閉部分多様体を考えて、もしそれが高さの小さい点(算術的な尺度で複雑さの小さい点)を稠密にもつならば、この閉部分多様体は「特殊部分多様体」である、という予想である。ここで特殊部分多様体とは、関数体の係数体上定義されるアーベル多様体の閉部分多様体の像と捩れ部分多様体の和で表される部分多様体のことである。 幾何的ボゴモロフ予想の研究に関して、平成26年度の研究実施計画においては、関数体の基礎体上定義されたアーベル多様体の影響と、それ以外の部分から来る影響の切り分けを行い、特に前者について解明することを計画していた。この研究は計画通りに進展し、その結果、「基礎体上定義されたアーベル多様体の影響の無い非退化なアーベル多様体」について幾何的ボゴモロフ予想が解決すれば、一般の場合も解決することが明らかとなった。このことは、最終解決に向けて大きな前進である。また、この研究の成果として、多くのアーベル多様体に対しこの予想が成立することも証明できた。 他に、トロピカル幾何の研究も目的に挙げており、平成26年度の研究計画では有限グラフまたは計量グラフ(単に「グラフ」という)の線形系の研究を計画していた。当該年度において、重みつきグラフの線形系の代数的階数と、重みつきグラフ上の線形系としての階数との関係を研究し、特に種数3の重みつきグラフについての成果を論文としてまとめた。代数曲線とグラフとの密接な関係を示す興味深い結果である。なお、その論文は出版されることが確定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の幾何的ボゴモロフ予想に関する研究実施計画において、関数体の基礎体上定義されたアーベル多様体の影響とそれ以外の部分から来る影響の切り分けを行い、特に前者について解明することを予定していた。当該年度においてこの部分については十分な形で解明が進み、プレプリントにまとめ公開するに至っている。したがって、この研究について計画通り進んでいると言える。 他に、トロピカル幾何の研究も目的に挙げていた。これに関しては、グラフ上の線形系の研究について論文を作成・投稿し、アクセプトされている。本年度の研究計画に照らして、十分な進捗状況である。 また、非アルキメデス的幾何における微分幾何的考察については、海外の研究者との討論を通して、問題点のあぶり出しを行い、予定通りの進捗状況である。 以上のことから、おおむね順調に進展していると評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の推進には該当分野に関する深い洞察が必要となる。そのために、これまで国内外の研究者との討論が重要な役割を果たしてきた。本研究課題の推進のため、今後とも国内外の研究者との討論を重要な方策と位置づけ研究していく予定である。具体的には、ドイツやフランス(その関連地域を含む)の研究者との討論を計画している。 また、本研究課題の推進に当たっては、広範囲の知見を活用する必要が生じつつある。必要に応じて、図書等を購入にその内容を取り入れることで必要な知見を得て研究に活用していく予定である。 幾何的ボゴモロフ予想については現状計画通りに進んでいるが、完全解決するにはまだ多くの困難が予想される。場合によっては、射影曲線とそのヤコビ多様体について幾何的ボゴモロフ予想を研究することを優先することも考えている。
|