2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26800025
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
永井 保成 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50572525)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 双有理幾何学 / トーリック幾何学 / 表現論 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,既約シンプレクティック多様体の良い退化の具体例を構成する方法として,K3曲面の半安定退化族に対する相対的ヒルベルトスキームの主成分の良い双有理モデルについての研究を行った.双有理モデルの取替えに関する問題であるので,まずは局所的な特異点に関する条件を調べることになるが,これはトーリック幾何学によって記述可能であることは昨年度までにわかっていた.今年度は,このトーリック幾何学の記述をより詳しく調べることによって,3つの既約成分が1点で交わらないような場合の退化について,A型ルート系のコクセター複体に付随するトーリック多様体を用いて幾何学的には完全な記述を得ることができた.この特別なトーリック多様体のコホモロジー環の対称群の表現としての指標公式が既に知られていることから,これを用いることで特異点に関する重要な不変量の一つである弦理論的E関数の一般的な公式を書き下す道具が原理的には揃ったと言える.ただし,弦理論的E関数がどの程度まで簡略な公式で表されるのかに関しては現在も研究が進行中である.これまでの研究成果について,10月と12月に京都大学で行われた国際研究集会で発表を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弦理論的E関数の母関数はアフィン平面上のヒルベルトスキームの場合に非常に簡単な公式があり,これがまた頂点作用素代数の表現と関連していることが知られていることから,現在研究をしている場合の弦理論的E関数が計算できれば,これは既知の場合の「退化」を求めたことになり大きな意味がある.退化した場合の弦理論的E関数の計算に向けて研究の進捗は順調であると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
目下研究中の多様体の弦理論的E関数をオービフォルド構造を用いて定義通り書き下した式は,それぞれの項が複雑であるばかりか,組み合わせ論的な複雑さも内包している.代数的組み合わせ論などの知見を活かしつつ,弦理論的E関数の良い公式を得ることを試みる.これが達成されれば,曲面の退化に付随する点のヒルベルトスキームの退化に関して,ひとつのまとまった結果が得られたとみなせるはずである.
|
Causes of Carryover |
概ね予定通り予算を使用したが,旅費支出が少なかったため12万円程度次年度に使用することとした.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
自らの出張等で旅費として消化するほか,研究課題に関連のある研究を行っている内外の研究者を招聘し研究打ち合わせを行うなどする予定である.
|