2014 Fiscal Year Research-status Report
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26800029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 亮吉 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (80629759)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 離散群論 / ランダムウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に行った主な研究の一つである, 双曲群上のランダムウォークの研究について述べる. 群上の確率測度$\m$に対して, ある点を出発点として取ることでステップ分布が$\m$(つまり各ジャンプが$\m$で与えられる)のランダムウォークを考えることが出来る. ここで次の$3$つの基本的な量を考える: エントロピー$h_\m$とドリフト$l_{\m,S}$, 体積増大度$v_S$(体積エントロピー)である. ($S$は有限生成系でこれにより語距離を定める). これらの間には次のような関係がある: $h_\m\le l_{\m,S}\cdot v_S$ (Guivarc'h (1980)による). Vershik(2000)はこの不等式の「等号成立の場合」を問題にした. 特に, 体積が指数増大度を持つ群($v_S>0$)において, 等号を実現する確率測度$\m$は存在するか? というのが問題である. 自由群では, 簡単な計算から, そのケーリーグラフ(今の場合はツリー)上の単純ランダムウォークは等号を実現することが分かる. しかし, より広いクラスの群については部分的な回答しか知られていなかった. これに対して, 非初等的な双曲群について, 有限ステップなランダムウォークを考える限り, 等号成立は, 調和測度とPatterson-Sullivan測度が互いに絶対連続になるときであり, その時に限ることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つ論文にまとめられる成果と, もう一つこれから論文にまとめられそうな成果が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
曲面群が双曲平面$\H^2$に自然に作用していて, ランダムウォークが$\H^2$の境界$S^1$に収束するような状況で, 「誘導された距離」で考えて, Vershikの問題の不等式がstrictであるか, という未解決問題がある. 上記の結果は全て「語距離」によるものであり, そこでは距離が整数値であることが効いている. 上の定理は, 調和測度とHausdorff測度(あるいはPatterson-Sullivan測度)を1-パラメータで繋ぐというアイデアに基づくものである. 1つはこの手法を追求することで, この問題へのアプローチを考えている. (しかし, 一方で``同様のアプローチ"では証明されないということも分かっている). また, このアイデアを用いて, $CAT$空間でより強い結果を出す可能性も考えている.
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Research Products
(5 results)