2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26800032
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北山 貴裕 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10700057)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 3次元多様体 / 位相不変量 / 表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
基本群の線型表現のモジュライ空間と3次元多様体の非可換トーション不変量の研究の相互発展を図ることを目的として研究を行った.当該年度は,数論的位相幾何学の見地から,Galois表現とその変形に対して期待される諸命題について,3次元多様体論における類似を追究することをテーマとして,主に,3次元多様体の基本群に対して有限体上の線型表現の変形理論を展開し,表現の普遍的な変形に付随して定まるトーション不変量の性質を明らかにすることに取り組んだ.具体的には以下の成果が得られた. 森下昌紀氏,丹下稜斗氏,寺嶋郁二氏との共同研究において,まず,結び目群の有限体上の2次元線型表現の普遍変形に付随するねじれAlexander加群は,適当な条件の下でねじれ加群であることを示した.これは,MazurがGalois表現の普遍変形のSelmar群の性質に対して提唱していた問題の,結び目群に対する類似的命題と見做せる.そして,このSelmar加群に付随する代数的p進L関数の類似物として,結び目群のねじれAlexander加群に付随するL関数を導入した.更に,幾らかの2橋結び目とそれらの2次元線型表現に対するL関数を明示的に計算した.この計算例においては,代数的p進L関数の零点に関してMazurが提唱していた問題の,結び目群に対する類似についても確認することができた. また,東京大学数理科学研究科において開催された国際研究集会The 12th East Asian School of Knots and Related Topicsの組織委員を務めた.集会では,3次元多様体のトーション不変量を含め,低次元トポロジーなど結び目理論に関連する諸話題を巡って,広く学術交流が行われた.集会には多くの若手研究者が参加し,当該分野の今後の発展に寄与するものと期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究において,Culler-Shalen理論とトーション不変量との関連を新しく見出したが,本年度は,この成果を更に発展させる上で課題となっていた,数論的位相幾何学の見地に立った研究を大きく進めることができた. また,当初計画していた,3次元以上の線型表現による3次元多様体の本質的分解の究明については,昨年度までの研究において既に十分な成果が得られているが,もう一つの研究テーマであるクラスター代数の応用との関連において,その理解を更に深める研究が進展中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で進展した,有限体上の線型表現の普遍変形に関する研究については,表現の変形が導く3次元多様体の分解の研究との関連を期待して,東京電機大学の原隆氏とレーゲンスブルク大学のStefan Friedl氏と密接な研究打ち合わせを行う予定である. また,本研究のテーマに基づいたセミナーを企画し,研究領域の育成・発展を図る.これまでに得られた成果を講演等により積極的に発信することを心がけ,研究を更に深める.
|