2016 Fiscal Year Research-status Report
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26800042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高尾 和人 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (80643832)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 可微分写像 / 特異点 / 結び目 / 橋球面 |
Outline of Annual Research Achievements |
多様体間の安定写像の特異点から多様体のトポロジーの情報を抽出する研究は様々な形で発展している。ところで、多様体上に定義される対象が2つ与えられたときに、それらを多様体の境界に沿って貼り合わせる操作を考えることは、トポロジーの研究において常套的である。特に、1つの対象のダブルをとる操作は基本的であり、安定写像のダブルを考えることにも、様々な応用があると期待される。そこで私は今年度の研究で、境界付きの3次元空間から2次元空間への安定特異点のダブルについて考察し、以下のような結果を得た。 (1) そのような安定特異点のうち数種類については、ある自然な同相的変形を施してダブルをとることで、境界の無い3次元空間から2次元空間への安定特異点にできることを証明した。 (2) 残りの数種類については、同相的変形を施してダブルをとっても、安定でない特異点が現れることを観察した。 なお、定義域が境界付きの場合も含めて、安定特異点の分類は既に知られており、それらの局所的な座標表示も(1)のような事実を示唆してはいる。しかし上に述べた「自然な同相的変形」は、各特異点の座標表示に依らず普遍的であり、大域的な安定写像のダブルの構成においても扱い易いものとなっている。その一方で(2)の観察は、安直に予想される程には単純な問題ではないことを示しており、今後の研究への関心を喚起する。またその他にも私は、張娟姫氏と小林毅氏と小沢誠氏と共同で、3次元空間内の結び目について研究し、結び目の橋位置と橋球面の関係についての結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄で述べた結果は、当初の計画でも想定していなかった研究の展開であり、期待以上の成果と言える。その一方で、当初の計画の一部は期待通りには進んでいないため、総合的にはおおむね順調と評価しておく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究集会等に積極的に参加して研究打ち合わせを行うことを主な方策として、直積写像のStein分解の大域的変形などの研究を推進する。例えば、6月に盛岡で催される「微分幾何学と特異点論の応用」や9月にポーランドで催される「Geometric and Algebraic Singularity Theory」などに参加して、特異点論の専門家たちと議論を交わす。また、8月に大阪で催される「拡大KOOKセミナー」などに参加して、低次元トポロジーの専門家たちとも議論を交わす。さらに、必要に応じて研究協力者を訪問または招聘したり、参考図書を用いて知見を広めるなどする。
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