2014 Fiscal Year Research-status Report
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26800049
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
西岡 斉治 山形大学, 理学部, 准教授 (10632226)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 差分代数 / 差分方程式 / 可解性 / 超越数論 / マーラー関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
この年度はq-Bessel方程式の非可解性に関する結果を得た。q-Bessel方程式は古典的な微分方程式の一つであるベッセル方程式のq差分版である。この方程式の解が有理関数を用いて、四則演算や1階線形差分方程式の解を取ることを有限回繰り返しても得られないことを示した。ただし、qは超越数であると仮定した。証明にはリッカチ型差分方程式に対する付値環型拡大による一般論を用いた。付値環型拡大とはFrankeによるLiouville型の拡大を包含するような差分体の拡大の一種である。ここで、差分体とは体に変換作用素(単射自己準同型写像)を付加したもので、変換作用素は本質的に全射であると仮定されることが多い。今回、既存の一般論を全射とは限らない変換作用素に通用するものに拡張した。 差分代数の結果を超越数論に応用する研究も行った。より具体的には、マーラー関数の値の超越性についての結果を得た。この研究において、マーラー関数は定数係数有理的差分方程式をみたすものとした。マーラー関数の値の超越性はマーラー関数の超越性を示すことで得られる。一般に関数の超越性を証明することは容易ではないが、既存の結果である、複数の有理的差分方程式の有理式部分の次数を比較することで、それぞれの解の代数的独立性を判定する手法を用いると、ある程度一般的にマーラー関数の超越性を示すことができた。この内容は論文にまとめて投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
qパンルヴェ方程式ではない離散パンルヴェ方程式の一つであるD7(1)型dパンルヴェ方程式について、その既約性を証明する内容の論文を投稿した。これは、離散パンルヴェ方程式の既約性の問題について、証明手法の体系化を行うという本研究の目的に関する前進である。結果として、既存の理論はqパンルヴェ方程式だけでなくdパンルヴェ方程式にも通用することがわかった。また、係数体上超越的な解が1階代数的差分方程式をみたすと仮定して矛盾を導く過程は本質的部分であるが、その証明手順や手法も概ね同じであり、いくらか方程式固有の工夫を必要とするとはいえ、やはり既存の手法が通用すると言える。 また、パンルヴェ型方程式の既約性の定式化に用いる分解可能拡大について、定義を精査することで、不要な条件を発見し除去することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
関数が代数的微分方程式の解には決してならないとき、関数は超超越的であるという。差分方程式の解の超超越性について、先行研究を差分代数を用いた現代的な手法で捉えなおす。また、既存のいくつかの結果を一般の変換作用素に関する差分方程式の解を扱えるように一般化する。これらを行うために、19世紀から現在までの超超越性に関する文献を収集するとともに、差分代数や微分代数、差分ガロワ理論、微分ガロワ理論、モデル理論等にわたる関連分野の近年の成果も収集し分析する。実際、近年ではガロワ理論を用いて超超越性を証明する試みが一定の成果をあげており、そういった研究者が参加し講演を行う研究集会に参加することで新しい手法についての資料収集を行いたい。
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