2014 Fiscal Year Research-status Report
量子可積分系の固有値と古典可積分系の保存量の対応の研究
Project/Area Number |
26800064
|
Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
土谷 洋平 神奈川工科大学, 基礎・教養教育センター, 准教授 (80460294)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 可積分系 / リーマン面 / ソリトン / 量子可積分系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、可積分系と呼ばれる分野において申請者が過去に発見した数学的な現象について、周辺分野の研究者への周知及び背景にある理論の探索を目的とするものである。平成26年度は、理論の探索を基調としつつも、過去に発見した例のうち未整理のものを論文にまとめ、学会発表も行い、周辺分野の研究者に注目してもらうという研究計画であった。結果として、学会発表と論文の投稿を行うことは出来なかったが、理論の探索については、2015年2月と3月に行った国内出張における研究打ち合わせにおいて進展を得て、現在論文を投稿準備中である。 進展の内容であるが、その要点はコンパクトリーマン面上に、ある種の対数型特異点を持った関数が存在することを示すことに集約される(研究計画調書、研究目的の3.の②)。京都大学、津田塾大学、Higher School of Economics (ロシア) などのリーマン面の専門家と議論を行ったが、「問題が難し過ぎる」、「特殊な対称性を持ったリーマン面を見つけなければ成立しないと思われる」などのネガティブなアドバイスが多かった。しかしその後、種数2という非自明なケースで、要求を満たす関数が構成できることを自力で発見した。これは、本研究課題における本質的な進展である。したがって、研究計画調書の「研究計画・方法」の(4)において掲げたミニマムな達成目標、「本質的な進展が無くとも、これまで得られた具体例を整理して発表し、周辺分野の研究者に興味を持ってもらう」を上回る成果は既に得られたと言える。この成果については、現在、数値計算による近似的な検算を行いながら、論文投稿の準備をしている段階である。今回の進展は、本研究課題に限らず、時間遅れなどの非局所項を持った数理モデルの解析全般にインスピレーションをもたらすものであり、本課題終了後に、関連他分野での成果につなげることも期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度の研究計画では、理論の探求に殆どの時間を割く予定であったものの、論文投稿、学会発表も1件ずつ予定していた。しかし、論文投稿も学会発表も行うことが出来なかった。これが、やや遅れている、と評価した理由である。その一方で、理論の探求に関しては、研究計画のミニマムな部分を達成することが出来たので、研究計画全体としては著しい遅れとは考えていない。論文投稿、学会発表などの結果の発表が出来なかった原因については、勤務先の教育業務、事務業務が想定以上の激しさであったこと、妻の体調不良(妊娠)によって家庭内の業務が増えたこと、周知するまでもなく興味を持ってくれた専門家が現れて、研究打ち合わせをする機会に恵まれたことなどが挙げられる。理論に関して現状以上の進展が無かったとしても、結果をきちんとまとめて論文投稿などの形で公表すれば、研究計画としてはまずは満足できる水準になる。現在、このまま結果をまとめる作業に重点をうつすか、それとももう少し野心を持って理論の探索を進めるかの分岐点に立っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本計画は、理論の探索と結果の発表からなっているが、理論の探索に関しては最小限の収穫物を得た一方で、結果の発表に関しては遅れをとっている状況である。今後、妻(2015年9月出産予定)の体調不良と勤務先の教育、事務業務の激化が予想され、本研究課題を課題提出時の計画のまま進めると、結果の発表の部分がさらに遅れる可能性がある。そのため、2015年度は理論の探索は基本的にこれ以上は断念し、結果の論文投稿と学会発表に力を入れる予定である。予定では2016年3月までに発表3件、論文投稿2件を行う予定であった。このうち、論文投稿は予定通りすすめられるが、学会などでの結果発表は2016年3月に行うなどの修正が必要と予想される。 また、国外研究者(研究計画調書、研究計画の(5)研究資金の必要性、予定ではWiegmann氏)の招聘による小規模研究集会の開催は、理論の探索の意味でも、結果の周知の意味でも本研究課題において重要な部分であるので、2015年12月以降、申請者と招聘者の予定が合う時期に行う予定である。
|
Causes of Carryover |
主に国内学会発表1件(5万円程度)を行わなかったことと、数式処理ソフトMaple(1ライセンス18万円)を購入しなかったため未使用額が14万円程度発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究課題申請時においては2014年度での使用を予定していたが、実際には使用しなかったものは国内学会発表1件(5万円)と数式処理ソフト1ライセンス購入(18万円)である。しかし2015年度に繰り越した額は約14万円である。これは書籍の購入や英文校正の費用が想定していたよりも多く発生したためである。したがって、2015年度にこれらの学会発表と数式処理ソフトの購入両方を予定どおり行うと、予算が足りなくなる可能性が高い。数式処理ソフトは、2014年度に得られた結果の検算と、理論の深化のために必要なものであったが、研究計画の進捗状況でも述べたとおり、2015年度はさらなる理論の探索よりは、結果の公表を優先的に行う予定である。したがって、数式処理ソフトの購入を断念し、それ以外は費目を計画通りに使用することにしたい。そうすれば、ほぼ予定通りの使用額になると考えられる。
|